【ケーススタディ】女性の意見がマンションの価値を上げる

前回はマンションクイズに多数のアクセスありがとうございました。
また今後もクイズ形式の記事を考えていこうと思います。
さて、今回も一部が体験型の記事になります。
読み手の皆様にご参加いただき違いを比べてみていただこうと思います。

ケース1

以下の画像は一時的に不要物を保管しておくために理事会が「何か無いか?」とフロントさんに依頼し、
フロントさんが手ごろな価格のロッカーを4台見つけてこられて設置したという設定のイメージです。
▼ 以下の画像に関して気になる点が無いかお考えください。
細かな部分まで見て考えるのではなく、パッと見た感じでお考えください。
これはクイズではなく、あくまで直観的に皆様が何を感じるかという事を確認していただくものです。
そのような意図があり構成してますので
◆違和感を感じるものが思い浮かんだら先をお読みください。
◆20~30秒見ても特に気になる点が無ければそのまま先にお進みください。

▲ 上図を見て何か気になる事はございますか?

まずは男性でこの記事をお読みの方、ロッカーの形とか大きさとか数とか・・・って思いませんでしたか?
勿論、男性が全員同じ考え方とは思いませんが、私は見事に最初に聞いたときロッカーのサイズの問題?かと思いました。
でもポイントは其処ではありません、今回は女性目線だと何処が気になるのか?というお話です。

実はある女性の区分所有者さんからご相談いただいた問題点が2点、上のイメージに隠されています。
1つ目は ロッカーの色です。

マンションは非常に上品で軽やかな暖色系の色なのに、
どうして汚いねずみ色のロッカーなの?
今度の大規模修繕でピンクに塗れないかしら?

とご相談いただきました。
2つ目も色ですが、これは最初からマンション全体に使用されているウレタン防水塗装のグレー色に関してです。

マンションの至る所の溝とか壁の下の部分が青っぽいねずみ色なんで気になります。
これも建物に合わせた色にできませんか?

とご相談いただきました。

更に話を伺っていると、この方だけではなく多くの女性住民の方がマンションのスタイリングやカラーコーディネートの細部に不満をお持ちだと分かりました。

▲ まとめると、こんな感じです

私は1つの業界の常識にとらわれないように、いくつもの専門分野でお仕事をするようにしながら常に新しい切り口で問題を解決したり現状を改善する努力をしてきましたが、この時ほど「ハッ」とさせられたことはありませんでした。目から鱗というか、正直な感想を述べれば
「(細かな部分まで気にするようにしてきたけど)ここまでの細部は今まで気にした事すらなかった」
というのが本音でした。
ロッカーの件もウレタン防水の件も言われてみればコーディネート的には最悪だと思います。
出来ましたら今一度2枚の画像を比べてみてください
どちらがバランスよく配色されているかは一目瞭然かと思います。

でもその一方で、ねずみ色(グレー・灰色)というのは最も汚れが目立たないニュートラルな色という事で昔から建築では基本色として採用されてきましたのでそれを疑問視した事はありませんでしたので、このような点も気にする方が居られるという事を知る事が出来たのは、とても良い経験でした。 
言い換えれば、細部にこだわってデザインすれば、それを理解し評価してくださる方が居られるという事なので良い時代になったなぁと思います。

ケース2

また別の女性の区分所有者さんから、壁の汚れに関してのご相談を受けました

この縞模様の汚れは掃除しても取れないんです。
今回の修繕で綺麗になったら今後汚れないように何か対策出来ませんか?

という内容でした。

▲ ゴムやアスファルトによる縞模様汚れ

上の図は実際に別の場所で調査して撮影した模様をそのまま3Dモデルに貼り付けて再現してみました。
このマンションの修繕前は全体的に廊下やバルコニーの手すり壁の内側がこのような模様で覆われていました。
交通量の多い場所に建つマンション特有の悩みだと思いますがアスファルトやタイヤが摩擦で削られてパウダー状になって空気中に浮遊しているのでこれが水平部分に堆積し、ある程度溜まると次の雨で壁を伝って流れ出すのですが、油分やゴムを含むので掃除しようとしても伸びてしまい綺麗に洗い流せなかったりします。 
この区分所有者さんは、この模様を見て毎日残念に思うとの事でした。

残念ながら予算があまりに少なくてグレードアップ修繕は1項目も採用に至りませんでした。
せめて総工費の1割程度の余裕があれば暮らしの品質を上げる修繕項目を加味することも出来たかもしれません。
そういう点でも長期修繕計画書の不備は早期に見直して予算を正常化していただく事は大切です。

まとめ

これらは建物の耐久性や人の命には関わらない部分ですが、そのマンションを所有している喜びを感じる為には、それらと同等の意味や価値がある修繕項目とも言えます。
カラーコーディネートやスタイリングはマンションという住空間では非常に重要な要素ですし、汚れにくい仕組みがあれば毎日綺麗な壁を見て暮らせるので1日1日が満足で充実したものになります。 これらは数字などのスペックだけで判断していると検討すらされ無い要素だけに、こうした意見が1つでも多く出て話し合われるのはマンションの価値を高く維持していくのに今後不可欠なのではないかと思います。 そこに住む方々が何を感じどう思うのか?という事が修繕項目の選定に加味されるようなマンションなら長く暮らしていくのも安心だと思うのですが、いかがでしょうか?

私も含め男性は数値的なスペックや価格には敏感ですが、機能性を重視するあまり、繊細なカラーコーディネートが崩れていることに気が付かないという事を思い知らされました。
※勿論、「すべての男性がこうで・・・、女性がこうだ・・・」と言うつもりはございません。ただ、聞き取り調査で明確な傾向の違いが出たので興味深いと思いご紹介させていただきました。
ここにご紹介した例はごく一部で、これまでに多くの目から鱗なご意見を頂き非常に感謝しています。修繕のお仕事は本当に勉強になる事が多く、新築の設計に生かせるアイデアも沢山思いつくヒントになりますので私達設計者にとっては本当に有難いです。

そして、こうした有益な意見を埋もらせない為にも、より多くの女性の方にも修繕委員をしていただいて、数字などのスペック以外の視点でのマンションの品質の向上に寄与していただければ良いのではないかと思います。 様々な議題に関して様々な視点や立場から意見が交わされて、その結果で修繕項目が決まっていくのが理想的ではないかと思います。 

ケーススタディに関して
これは実例を体験するように見ていただき、よりリアルな感覚で記事を読んでいただこうという企画です。
しかし実例には良い例もあれば悪い例もある為、私が経験した本当の実例をそのまま掲載するのは良くないと考え、
本ブログでは、私の体験談の一部または殆どを現実とは内容が異なる完全フィクションに変更したうえで私が経験しているという設定でご紹介します。
現実に皆さんの身に起きているとお考えの上、お読みいただくのが狙いですので、
良い例と思われるものは是非取り入れていただき、悪い例の場合は同じことが起きた場合、ご自身のマンションではどのように対処すべきかお考えいただく機会となれば幸いです。