【大規模修繕アンケート】住民アンケートが教えてくれる真実&教えてくれない真実

住民アンケートは私達にとっても、区分所有者や住民の皆様にとっても非常に重要な存在です。
私達にとっては建物調査と共にそのマンションがどのような状態なのかを知る為の情報源であり、皆様にとっては最初に工事に関するご意向や現在お困りの事をお伝えいただく手段となります。

まずは端的に申し上げますと、アンケートにお答えいただき集計した内容はそのマンションの民意として重視させていただくという事になります。

ですので一人でも多くの方にご協力いただきご自身の意見をお伝え頂きたいと考えております。

アンケートを実施する目的

◆お一人お一人のご意見をしっかりと聞かせていただく事
◆現在建物にどのような問題が出ているのか?
◆それにより、生活にどのような支障が出ているのか?
◆どのようなサービスや工事を希望されているのか?
をお伺いし、
結果を集計してお知らせする事で

<皆様にとって>
◆マンション内の他の方々はどうなのか?
◆同じ問題で困っている方が全体に対してどれくらいの割合で居られるのか?
◆他の方々が何を望んでおられるのか?何で困っておらっれるのか?
を明確にすることが出来ます。

<私達にとっては>
◆建物調査の対象範囲外に起きている問題の把握
◆新築時の手抜き工事や重大な欠陥の有無の確認
◆皆様のご希望・ご意向の把握
が主たる目的となります。

つまり100%に近い皆様にお答えいただく事が出来れば
現在マンション内で起きている問題の数々が浮き彫りになるという事です。

逆に回答率が低くてあまりアンケートが回収できない場合、
これらの問題は隠れたままになってしまい
多くの部分を想像で埋めて計画を進めなくてはいけなくなります。

結果を受けて対応策を練る

多くの方が困っておられる問題になればなる程重大な事項として対応策を検討しなくてはいけませんし、逆に一人でも二人でも困っている方が居られる問題がある場合は(普段の多数決では否決されてしまうので)そのお困りの度合いに応じて何とか予算を確保して対応できるように理事や委員をされている関係者の方々を説得したりする必要があります。
普段のやり取りを伺った印象では、このような配慮は私達がいる間しか行われないと思いますので、大規模修繕工事に直接関係ないと思う内容であってもお知らせいただければ幸いです。

隠れている問題

私達が建物調査を行う範囲は調査によって問題が判明しますが、専有部分の問題やバルコニー内で起きている問題は(一部の有志の方にご協力頂き調査させていただくのを除いて)私達は(バルコニー内の場合)足場が組まれるまで立ち入る事が出来ませんので、工事を計画する時点で判明しない問題もございます。

住民の皆様が普段の暮らしの中で目撃されている問題の中には、何年も皆様をサポートしておられる管理人さんやフロントさんでも把握できない事も多く、皆様から直接ご報告いただく事でしか得られない情報もございます。 特に専有部分内部で起きている問題は一見関係なく思われるかもしれませんが、共用部分の問題が原因で起きている事もございます。

ここで大切なのは、アンケートに書いていただけていない問題は誰も把握しないまま存在しない事として扱われてしまうという事です。
前にも書きましたが、クレームが出ないから上手くいっていると判断するのは間違いで、マンションでは立場が弱くて人前では発言できない方なども居られますので皆さんが安心して住めるマンションとする為には1つ1つ対策を講じて根気よく問題を減らしていく必要があります。 その為にはまず私達に「何が起きているのか」教えていただかなくてはなりませんので、アンケートにお書きいただくようお願いいたします。
問題の大小、工事との関連の有無を問わず、気になる事は全てお伝えいただければ幸いです。
アンケート用紙に書ききれないほどあれば別の紙に書いて提出いただければすべて読ませていただきます。

アンケート回収率を高くする影の力持ち

アンケートの回収率が高い管理組合は優秀だ

とよく言われているのを聞きますが、本当にそうでしょうか?
住戸数が少ないマンションならそうかもしれませんが、
住戸数が多くなればなるほど別の方々の力が重要になると私は痛感させられたことがありました。

実はアンケート回収率を上げる為に陰で最も力を発揮しているのが
◆管理人さん
◆フロントさん
のお二人だと私は強く思う事がありました。

管理人さんの影響力

まず管理人さんは前を通る住民の方々に
「○○さん、アンケート未だですね?」
みたいな感じで未提出の方一人一人に声掛けしてくださったりして
それがきっかけで急いで書き込んで提出してくださった方々も多くおられたようです。
顔と名前が一致させられる管理人さんだけが出来る事です。
丁寧に部屋番号順に並べて未提出者を確認していただいていたようで本当に助かりました。

フロントさんの情報力

一方でフロントさんはマンションの区分所有者さんと住民さんが同一ではない(いわゆる賃貸になっている)住戸全てを把握しておられて、その全ての区分所有者さんたちの現住所をお持ちなのでその住所にアンケートを転送してくださいました。
アンケートの集計は各戸1票で行うので1つの住戸に関して住民の方と区分所有者さんの2つのアンケートの回答を集計に入れてしまうとそこだけ2票になり不公平となるのでどちらかのお答えを選んで頂いて集計しますが、区分所有者さんに(どのようにされたいかの)ご希望を伺い、優先する意見を指示していただき集計します。(この時は)原則としては住民の方の意見を優先する事になりましたが、区分所有者さんからの要望もしっかりとお答えいただけた為、1つでも多くの判断材料が欲しい私にとっては非常に有難く感じる出来事でした。
更には期限を過ぎてもお答えいただけ無かった方々にフロントさんが熱心に催促(最高3回)していただき、結果的に90%を超える回収率となりました。

お二人の協力無しの時の回収率

ちなみに同じマンションで
お二人のご協力が無い場合(通知は1回のみで再請求なし、転送無し、ポスト投函のみで実施、声掛け無し)での回収率は45%でした。

普段の生活で忙しい中つい忘れたままになったり、提出しようと書いたまま時間が経って紛失されたり、色々な理由で出せなくなっている方々に声掛けを行い、紛失などの問題が出ていれば直ぐにコピーをお配りいただいたりというサポートもあって90%という回答率が実現していると知り本当に感謝しました。

このように単にアンケート調査を実施しただけでは半分程度しか回収できない事もありますが、それを限りなく100%に近づけて下さった2人の存在は大きいと思いました。
私達は真似できない事をやってくださった事に感謝するとともに、あまり知られていない事実をここに記すことで他のマンションの方も含め多くの方に知っていただければと思います。 どんな事でも裏方として働くときは評価されませんが、この件に関して回収率を高めたという点ではこのお二人の貢献度は非常に高いと思いました。

アンケートに関する問題

回収率

上記のように管理人さんとフロントさんのサポートや住民の皆様のご理解とご協力があるマンションでは住戸数が100を超えても回収率は9割を超えるかもしれませんが、全てのマンションで実現している事ではないそうです。 特に大きなマンションや若い方々が中心のマンションでの回収率が低いそうです。 あまりに回収率が低いと工事が始まるまで隠れた問題が把握できないという事も起きるので、事前に対策出来ていないことにより結果としてコストが上がる事にもなります。

実は工事というのは相見積もりの時が勝負時で、この契約前のタイミングで互いに条件を出し合って少しでも安い金額で必要な品質が実現できる相手を選ぶのが重要なのですが、一度契約してしまうと、工事業者さんは安い値段を出す必要が無くなるので、通常、追加工事は割高な単価で出されることが多いのです。 ですので1つでも追加を出さないように、事前に単価を提示していただく事が無駄なお金を流出させないために大切です。 その為には、事前に1つでも多くの問題を計画段階で把握している必要がありますので、その手段の1つとしてアンケートが大切という事になります。

プライバシー

「上の階からの音がうるさい」多くの方々がアンケートにお書き下さらなかった問題の1つがこれでした。
直接お会いした時に色々な話を伺う中で「実は・・・」とお聞かせいただく事が何度かありましたが、殆ど誰もアンケートには書いておられませんでしたので

何故アンケートに書いて下さらなかったのですか?

と聞くと、

誰が読むか分からないアンケートに住民トラブルの火種になるかもしれない事は書けませんよ

とお答えいただき驚いたと共に自分の経験不足と配慮不足を痛感しました。

※ここで言う上階からの騒音というのは足音だけの問題ではなく、朝の6時に洗濯機を使用する音が配管を通じて聞こえる問題(高級マンションでもSIが主流になって間取りが自由に変更できるようになってから増えています)など、場合によっては大規模修繕で対応可能な問題も含まれます。

このような件は、結局皆さん私には直接話していただけますが、
「管理組合、管理会社の誰にも知られたくないので絶対に言わないで下さい」とおっしゃる方も居られました。
つまり、私達外部業者は工事が終わると居なくなるので口を滑らす事も、ペラペラ話して回る事もないので相談できるけど、マンションに常にいる方々や常駐している業者さんに伝わると一気に広がるから言えないそうです。(実際その方はフロントさんに穏便に解決してほしいと相談したご近所トラブルの件をフロントさんによって理事会の議案に出されて議事録に部屋番号まで掲載された経験があるらしく、それ以降何も相談しないようになったそうです。) これは大規模修繕のお仕事をするまで全く想像もしていなかった事でしたので驚きましたが、人の口に戸が建てられないという事が常識化している日本ではこんな悩みまであるのだと知り、出来る限りの対策は講じるべきだと思いました。

全員郵送で私の事務所にお送りいただく方法やマンション内の1階EVホールなど防犯カメラがある場所の前に中身が取り出せないポストを設置して投かんいただき私だけが鍵を持つ状態として回収する方法、封印する時に剥がすと元に戻らないシールを使う方法など、いろいろ検討していますが、この件に関しては他にも配慮すべきことが幾つかあるので今後、対応策を話し合って講じていこうと思います。

ただし、回収率の項目で書きましたが、大きなマンションでは管理人さんとフロントさんの働き無くして90%を超えるのは難しいと思いますので、何を優先すべきかも含め難しい問題です。

アンケートの内容

隠れた問題を1つでも多くご報告ください

私は対象のマンションの建物の健全性を判断する為に必要と思う項目を中心に質問を作成いたします。
例えば専有部分での不具合は大規模修繕では直せない事が多く、原則として対象外ではありますが、その情報で共用部分の問題が判明したり、新築時の手抜き工事や瑕疵等の可能性を判断したりすることで建物調査の範囲や調査内容を決める事にも役立てさせて頂いています。
実際、新築工事を担当したゼネコンの監督さんが築2年目のアフターサービス工事の時に被害に遭った区分所有者さんに嘘の説明を行い他の誰にも伝えずに(専有部分の)雨漏りの補修をしていた事が判明したおかげで、その上の共用部に設置されている構造物に起きている問題が判明しました。 問題をお知らせいただき、その原因を調査する中で判明させられた事でした。 その構造物は一見しただけでは(外部からは)何の問題も見当たりませんでしたが、直下の階に起きていた問題の調査の為一部を破壊して確認した事でようやく問題が判明したのです。 何の問題も報告されていなければ(部分的とはいえ)通常、お客様の資産を破壊までして調べませんので最悪の場合、問題が大きくなり表面化するまで判明しなかった可能性もあります。 
このように無関係に思える事や小さな事でも「念のために」ご報告いただければ私が自分の目で健全かどうか確認いたしますので宜しくお願い致します。

皆様のご要望をお聞かせください

また皆様のご希望・ご要望を中心としたマンション全体の意見として住民の皆様の何割が何をご希望なのかなど、後に修繕委員会で話し合う際の根拠や指標となるデータとしても利用させていただけるように質問項目を吟味してアンケートを作るようにしています。 修繕委員や理事の方々も人間ですのでご自身の利益を追求しようとされることがあります。 それがマンション全体の不利益となる事も少なくない為、マンション全体ではどのような意見なのかをアンケートによって調査しておくことで多くの皆様のご意向から大きくズレない計画になるように、そのガイドラインとなるようにアンケートで質問を決め、集計結果を皆様に配布する事でそのマンションの「民意」を明らかにすることも大切と考えております。

情報を集約する手段としてのアンケート

建物調査同様、マンションごとに気になるポイントが大きく変わりますのでマンションごとに伺う内容は違いますが、早期にどれだけ精度の高い情報を集められるかは後日行います様々な調査や判断に大きな影響を及ぼしますのでじっくりと取り組むようにしております。

また一般的には集計に手間がかかるという理由で避けられると言われる記述式の質問、つまり皆様に文字でご意見を書いていただく質問ですが、私は随所に設けております。
AかBかを選んで頂くだけでは伝わらない「AなんだけどBも実は・・・」みたいなご意見をより多く確認させていただく為にも記述式の項目は減らせませんので随所に設けておき、意見のある方だけ書いていただくようにお願いしております。 過度な負担とならないように興味のない事や気にならない事は空白で出していただいても全く問題ございませんが、気になる事だけはしっかりとご意見をお書きいただければ、そのご意向を修繕委員会で検討していただけますのでよろしくお願い致します。

集計結果

質問全ての回答比率を一目でわかるグラフや大きな数字で表示し、集計結果と共に、気になったことをコメントとして入れさせていただく事でお読みいただく皆さまに分かりやすく、かつ、読み応えのある内容にするようにしております。 ブログ同様、文字だけでやり取りするコミュニケーションですので十分な情報をお届けするように心がけております。
言い足りないよりは、言い過ぎるほうが良い・・・情報のやり取りを文字だけで行う場合は時間と手間を惜しまず内容の濃さやクオリティーを重視して行うようにしています。
このブログでも1つの記事を書くのに何日もかけて、何度も読み返して書き直しを繰り返してから世に出していますが、アンケートや他のお仕事でも取り組み方は同じことで、品質を重視する為に、じっくりと時間をかけて作り上げていくように心がけています。
過去にも、皆様から

かなり読みごたえがあった

と言っていただいたり

普段、お知らせは読まずにゴミ箱だけど
君の出してくれる資料は役に立つから読んでいるよ

と言っていただいたのがとても嬉しく思い励みとなりました。

集計には膨大な時間が必要になりますが、手間暇かけている一番の理由は一人でも多くの方々に読んでいただきたい、マンションの現状を正確にご理解いただきたいという事ですので、皆様にとって知りたい情報や役に立つ情報を随所に入れたりしながら作るようにしています。 
実際数字にしてみたり比率を出してみると

思ってたよりも多くの方が同じ問題で苦しんでいると知って驚いた。 自分だけなら我慢しようと思ってたけど、これなら堂々と対応を求められるので安心した。

等のご意見を聞くようになりました。
想像と現実との差を埋める事もより良い大規模修繕を計画するのには不可欠です。 皆様の多くは「何となくこうだろう」とお考えの上判断されている事が多いようですが、調査してみると想像と違うという事は良くあることです。 特にマンションのように様々な方々が1つ屋根の下に暮らしておられる場合はしばしば起きる事です。 その誤解で諦めてしまう方や我慢を強いられる方を無くすためにも、皆様からお寄せいただいた情報をまず私が理解し、集計し、皆様にフィードバックするという事で正しい理解をマンション全体で共有していただき、初期の地盤を強固なものとするように務めさせていただきます。

興味を持っていただかないとご理解やご協力を得られませんし工事そのものを成功させることが出来ないので、まずは序盤戦で良好なスタートを切る為にもアンケート調査は最重要ですので、お忙しいとは思いますがどうかご協力のほど宜しくお願い致します。

最後に

皆様から頂きました回答は私達にとって見えない問題を可視化するために非常に重要ですので
どのような事であれお気軽にご意見を賜れればと思っております。

築後十数年というタイミングで私達が呼ばれ大金を使って行っていただく大規模修繕工事ですので、それまでの間に色々な事を経験されたと思いますが、今一度気持ち新たにマンションを皆様のお力でより良い資産とする為、無駄なお金が流出するのを予防する為、アンケートへのご協力をお願いいたします。