転覆病予防に効果的な青水沈殿餌ダイエット

青水の構成物である単細胞藻は稚魚の餌としても非常に有効ですが、消化能力が弱った金魚の餌としてもその真価を発揮します。
まずはこの青水沈殿餌の動画をご覧ください。

青水沈殿餌動画の説明

まず、動画に関する説明ですが
1分毎に撮影した写真を繋げてパラパラ動画にしました。
1秒間に10枚が入れ替わるように設定しましたので
動画の1秒間が実際の10分の活動を示します。
(600倍速という事になります)
撮影は
2015年10月26日10時30分から
2015年10月27日09時30分頃までです。
つまり朝から開始して23時間ほどの記録を600倍速でご覧いただきました。

青水沈殿餌と金魚

実験に登場しているのは当時産まれた稚魚2匹で、どちらも転覆傾向があったので転覆予防として行いました。
※普段は1か所にまとめて行いますが、今回は実験なので互いの活動に影響されないように別々で行いました。

ここで使用しているのはコケではなく青水を沈殿させたものです。
ですので苔のように底や壁面に吸着していないので
金魚が突けば簡単に口に入れられますのでビデオのような感じで自由に動きます。

特筆すべきは2匹とも全く寝ずに23時間 休む事も無く
良く泳ぎ・良く食べ・良く糞をする状態になっている点です。
糞に注目頂きたいのですが、夕方手前くらいから徐々に出始めて夜明けには長い糞が出ています。

水槽に居た時は泳ぐとフラフラするし、多くの時間1か所に固まるように居るだけでろくに泳がなかったのですが、青水餌のコンテナに入れた途端、底に沈殿した単細胞藻を貪り食う状態のまま23時間・・・他の金魚も毎回このパターンなので不思議なのですが青水沈殿餌ってそんなに美味しいのでしょうか?
植物性の餌としては最も金魚が好む餌ではないかと思います。

結果は写真に示していますように体長が3㎝程度の金魚としては大量の糞を出しました。
青水沈殿餌はココア浴の時のようなスカスカのバラバラ糞ではなくしっかりと詰まった(消化処理された)糞なので撮影のためにスポイトで吸い取って別の容器に移動してもこのように形状を保っています。
これだけしっかり詰まった糞を写真のような量出すのですから消化能力は十分に高く維持されますしタンパク質をはじめとした栄養素もしっかりと金魚に吸収されますので毎日でも給餌可能です。

金魚は一気食いさせると消化が間に合わずお腹に未消化物がたまり、これがガスを発生する事で転覆する訳ですが、このように消化が早いものであれば次々に食べてもお腹を詰まらせることなく綺麗に排泄されますので青水沈殿餌は転覆予備軍の予防や初期の転覆魚の消化能力回復に役立つという訳です。

ただし、転覆症状が悪化して裏返ってしまった金魚を元に戻す効果はありません。
裏返っていること自体がもはや餌の未消化ではない別の問題にシフトしているためです。
ですのでこの餌は裏返る前までに効果的なものとお考えください。
病気の時に人間が食べる粥のようなものとお考えください。

動画用に実験形式で時間を区切って行いましたが
稚魚飼育転覆病予防青水沈殿餌を用いる時は、
水槽内に入れたままにしておき24時間食べ放題のサラダバーのような感じで何日も放置しておきます。
ある程度すると糞とカスが溜まり、ゴミになるのでそのタイミングで掃除をして新しい青水沈殿餌と取り替えます。(環境によってはどんどん青水沈殿餌を追加していき、時々底をポンプで吸い出すという方法でもOKです。)

青水沈殿餌の効果と安全性

このように糞の量を見ていただくと分かりますが人工餌では不可能なスピードで消化されて出てきます。
途中から長い糞を出しながらも、休むことなく食べ続けますが、この件で水質の悪化は起きませんし粘膜の剥離も一切起きません。
もともとココア浴の代わりとなる より安全で効果的な方法として考案しましたが
ココア浴で起きる問題
◆粘膜剥離 
◆アンモニア上昇
はクリア出来ていますので、安心して実施していただけます。
この場合は治療というよりもリハビリなので治療用の水槽を準備する必要は無く
普段の飼育環境に直接、青水沈殿餌を投入していただいても構いません。

設置条件に関する注意事項

この撮影ではビデオにした時に見やすくするためにエアレーションは使用せず、水深を浅くしたうえで、小さな金魚を使っています。
リハビリ目的で普通サイズの金魚を入れて行う場合は、
◆水深を20㎝程度にする(大きな金魚ならそれに応じて深くしてください)
◆エアレーションをする
◆十分な大きさの容器で行う
の3点にご注意ください。

長期的なご利用の場合は
◆ろ過装置も作動させる
必要があります。

青水沈殿餌のメリット

栄養と消化

使用している青水沈殿餌は栄養価が高くタンパク質も豊富で僕が知る限り最強の金魚餌の1つだと思います。
苔同様に栄養面だけで言えばこれだけで稚魚を育てる事が可能です。
そして植物性なので人工餌よりも消化が良く、上記の金魚達のように消化能力が弱っている金魚に最適な餌になります。
人間で言えば粥みたいな存在です。

効果的な使用時期

撮影日時からわかると思いますが、これは秋の映像です。
夏の暑さが過ぎ去り温度の乱高下がおきながら徐々に水温が下がり始める時期ですので油断していると転覆が出やすい時期です。
このような時期に確実に治して冬に向かう為にも青水沈殿餌は有効ですし、低温時に定期的に与えるのも良いと思います。

青水沈殿餌の作り方


少し濃い目になった青水をエアレーション無しで容器に入れて1か月ほど放置するとできます。

このような感じで約1週間から1か月放置しておきます。

するとこんな感じに沈殿します。

水を抜いて飼育水を入れてその中で飼育しても良いですし、
沈殿物を集めて既存の水槽にポトポトと落とし入れても良いです。

ただし注意すべきポイントがあり、それを外すと失敗(腐敗)します。

真夏など高温時には作らない

エアレーションも無く1か月間放置すると栄養分の多い水は腐ります。
失敗すると硫化水素の匂い(俗に言う温泉の匂い)がしますので僕はその場合は捨てています。
一説には(農業などでは)硫化水素が発生しても、かき混ぜて飛ばしてしまえば無害だと言われますが、稚魚や転覆しかけている弱った金魚に与える餌なので現時点では十分な知識がない為、硫化水素臭がしたら捨てています。

逆に言えば冬は1か月放置しても腐敗しにくいので比較的成功率が高く維持できます。
最初は是非、室温が低い時期にチャレンジしてみてください。

一気に大量に作らない

最初に仕込む青水の水深は20㎝以下であるほうが上手くいきます。
量はあまりとれませんが水深5㎝くらいならまず失敗しないと思います。
これは、あまり水深を深くすると水面から取り込まれた酸素が下まで行かないのが原因で腐敗し始めるのですが、最悪の場合、底の部分が嫌気環境になりエロモナスなどが爆増する条件になります。

日光が少し当たると良い・・・場合もある

直射日光がガンガン当たると青水は飛びませんのでなかなか沈殿しません。
少しでも早く作ろうとする場合は日光を完全に遮断するのが良いのでしょうけど
そうすると青水を構成する単細胞藻が死滅してしまうという問題があります。

別案として
一時的に日光が当たり青水が光合成をして酸素を作りだすという状況を作ると底にも十分な酸素が広がるので嫌気化させずに済みます。 これまでの経験では数時間だけ日光が直接差し込むような場所が最も理想的でした。

嫌気環境に関して・・・嫌気イコール問題という訳ではありません。
金魚水槽は必ず嫌気環境が出来ます。
例)古い苔の下
それでも直ぐに金魚が病気になるわけではありませんし、逆に嫌気環境に住む良いバクテリアも居ますので必ずしも悪いものではありません。 ただし過度に増やして良いものでもないので本ブログでは基本的に嫌気環境を意欲的に作る事はしない方向で記事を書きますが、ゼロにはならないという事だけご理解ください。

青水に関して効能を言えばキリがないほど多くありますが、今回はその1つである消化の良さや栄養バランスの良さを利用して稚魚を飼育したり転覆予備軍を健全化する為の餌を作るという使い方をご紹介しました。