正しいアンモニアの調べ方と高濃度アンモニアの対処法

金魚部を書き始めた頃は金魚飼育で水質検査と言えば笑われましたが、最近は時代も変わりかなり普及してきて嬉しい限りですが、ネットに流れている情報を見る限りでは安心できないと感じたのでこの記事を書く事にしました。 

アンモニアの濃度が現在どの程度かを把握する事は金魚飼育を続けるうえでとても大切です。特に季節の変わり目や金魚を追加した直後などは確認しておかないと数日で高濃度に上がる事も良くあります。この記事ではアンモニアを低コストで調べるアイデアのご紹介と、アンモニアが高濃度で検出された場合の安全な対処法をご説明します。

本当に正しいやり方で検査できていますか?
アンモニアが検出された時の正しい対応(追加検査)はご存知ですか?

念のためこの記事を読んで全て正しくご理解いただけているか今一度ご確認ください。

アンモニア検査薬


テトラ (Tetra) アンモニア試薬NH3/NH4

色々な検査薬がありますが僕はテトラの液体のものをお勧めします。
◆消費期限が長い
◆ストリップタイプよりも正確
などが表向きのお勧めの理由ですが、
金魚部で公開してから2週間でネット中に拡散したあの方法が使えるからです。
本来の使い方とは違いますが、単にゼロなのかそうでないのかを知りたい時など、正規の方法の7分の1のコストで検査できるので
25回分の検査薬を買うとその約7倍
25x7=175回も検査出来ちゃいます。
仮に1750円で購入しても1回10円で検査できるのです。
※通常は1750円より安く買えるはずです。

(改訂版)1回10円以下で検査する裏技

正規の方法では5mlの飼育水に対して
試薬1を14滴、試薬2と試薬3をそれぞれ7滴で検査します。

より正確な結果を知りたい場合は正規の方法で検査して頂けばよいですが、
簡単にゼロかそうではないのかを確認するなら
試薬1を2滴、試薬2と試薬3を1滴で調べられるように
飼育水の量も7分の1にすればよいので
5ml÷7=0.714・・・≒0.7mlを計測すれば良いだけです。

昔は付属の容器で何とかこの量を掬い取るという事をしてましたが最近は調べる水槽も多いので目盛りが付いたスポイトで吸い取るようにしています。
より正確な量を吸いたい場合は少し高いガラス製のピペットを買えばよいですが、少し頭を使えば100円ショップの5本で100円+税のスポイトでも十分です。注射器を使うのも良いかもしれませんが工程を考えると吸い取りが片手でできない為、作業が非常に邪魔臭くなるので、全行程片手でできるスポイト(又はピペット)がお勧めです。

また昔は付属のプラ容器で検査してましたが今は数が多いので製氷皿(ホワイトのみOK、色付きはNG)を使っています。
これなら飼育水の採取の時に順番通りに採取していけば
後からどれがどれか分からなくなる事はありませんし、順番に並んでいる状態で撮影できるので記録も楽です。
水槽が沢山あって一度に何か所も検査する方には特におすすめです。
最初は絵の具のパレットを使ったり、陶器の白い小皿を使ったりしてましたが、製氷皿がベストだと思います。

手順

1

検査したい飼育水0.7mlをスポイトで吸い取り製氷皿に落とします。

2

続けて別の水槽の飼育水を同じスポイトを使用して取る時は
次の水槽の飼育水を多めに採取してスポイトの中を一旦満たしてから全て捨てます。

3

改めて飼育水を採取し0.7mlを製氷皿に落とします。

4

これを繰り返します。

※これでスポイトの中に残っている前の飼育水の影響を無くします。
研究所なら毎回新しいスポイトや消毒したピペットを使うのでしょうけど
ご家庭で行う簡易テストでそこまでする必要はないのでこのように毎回次の飼育水で一旦洗浄して繰り返す方法を採用しました。

全ての検査対象の飼育水が採取出来たら
いよいよ検査薬を落とします。

5

試薬1を各2滴、飼育水が入っている全てのポケットに落とします。

6

試薬2を各1滴、飼育水が入っている全てのポケットに落とします。

7

試薬3を各1滴、飼育水が入っている全てのポケットに落とします。

8

20分待ってからの色を読み取り検査完了です。

一般的な注意事項

テスト用に採取した飼育水の温度は20℃から30℃でなくてはいけません

それ以外の温度では正しい発色とならない事があります。
特に冬場の検査時はこの事をお忘れなく。

試薬を落とす時試薬ボトルは斜めにしてはいけません

まっすぐ下を向いていないと少ない量で試薬が落ちてしまいます。

20分待たずに読みとった色は低い値を示すことがあります

アンモニアが濃いと試薬3を落とした直後から色が緑になり始めます。
でも数分で出る色は未完成の色なのでその値で安心しないでください。
20分経過時の色を読み取ってください。

アンモニアが検出された場合の注意事項

TAN 総アンモニア

その前に基本事項のおさらいです。
検査薬で検出できるアンモニア値は2種類のアンモニアを合成した値で、一般的にTANと呼ばれます。 日本語では総アンモニアと言います。
これは毒性のあるNH3とイオン化され毒性のないNH4の混合という事ですが、金魚に問題となるのはNH3の量なので、アンモニア検査で総アンモニアがゼロでなかった場合は、これを調べる必要があります。

ゼロならそこで終了して大丈夫ですが、それ以外は更に検査をする事になると覚えておいてください。

つまり以下は検査結果がゼロではなかった場合の対応の仕方です。
同じ検査結果でもアンモニアの毒性は以下の条件で変わるので、ゼロ以外の数値が出てその毒性を把握したい場合は以下の事も確認する必要があります。

まずは水温計測とpH検査をする

アンモニア検査薬しかお持ちでない場合、
ゼロかそれ以外の判定までは可能ですが、毒性の判定まではできません。
毒性を判断したい場合は併せてpHの検査が必要ですので
pHの検査薬もお買い求めください。


テトラ (Tetra) pHトロピカル試薬 (5.0-10.0)

pHとアンモニアの毒性の関係表

以下が水温25℃でのpHの違いによるアンモニアの毒性レベルです。
アンモニアが1.5mg/L, 3.0mg/L, 5.0mg/Lの時の各pHの値での毒性の変化を見ていただく為に作りました。
検査が25℃付近の時はこれを参考に判断してください。

水温25℃時のpHとアンモニアの関係 <木苺共和国オリジナル>
pH \ 総アンモニア 1.5 3.0 5.0
6.0 0.001 0.002 0.003
6.5 0.003 0.005 0.009
7.0 0.008 0.017 0.028
7.5 0.025 0.054 0.090
8.0 0.080 0.160 0.266
8.5 0.225 0.460 0.764
9.0 0.540 1.080 1.800

この表の色の意味は下の 数字と色の意味 をご覧ください。

温度とpHとアンモニアの毒性の関係判定プログラム

それ以外の温度でも同じ様に判定できるように簡易判定プログラムを作ってみました。 

以下の判定プログラムをご利用の際は
温度アンモニアpHの3つをお選び下さい。
<下のグレーの数字部分をクリックすると選べる数字の一覧がべろーんって出ます>
3項目全て選ぶと下に判定結果の数字(1から4)が出ます。
数字の意味は下の 数字と色の意味 をご覧ください。
▼ ここから下が判定プログラムです ▼

上表の色 及び プログラムの数字の意味

数字と色の意味
1=安全
2=ストレスを与える
3=数日で死ぬ
4=1日で死ぬ

※ここに書かれている「1日で死ぬ」はUSGSなどが一般の魚全てを対象に標準化した指標です。
金魚単独の場合、この指標よりも少し金魚は強い傾向を示すと思いますので決して焦らず時間をかけて水替えしてください。
焦って急に水を入れ替えるほうが死なせるリスクは遥かに高くなります。

水温とpHとアンモニアの毒性の関係 傾向と対策

表を読んだり、判定プログラムの数値を変えてみていただくと分かりますが、
傾向として
◆アルカリ性になる程毒性が上がり
◆温度が上がる程毒性が上がり
ます。

また表から分かるように酸性側ではアンモニア値が高くても毒性は殆ど無く、
逆にアルカリ性側では急激に毒性が上がります。

大きな数値が出た場合に半分水を替えるとかは危険な場合もありますし、中毒になりかけている場合は水を一気に全て替えると症状が悪化してしまう事もあるのでまずはpHを検査して毒性を判断し、対応策を考える必要があります。 焦って一気に水を替えないようにご注意ください。

毒性が高いと判断した場合の対処法

◆水を替える

とは言え、最も簡単に出来る方法は水替えです。
上記のように大量に水を替えたりするとその時点で金魚がショック死する可能性もあります。
毒性が高い場合は焦らずに1時間に10%以下の変化となるように時間をかけて替えてください。

これは金魚の体内が現在の悪い環境に合わせて調整されている為、急に正常化するとその差が埋めきれずショック死するか症状が一気に悪化する事があるので、大きな落差を経験させないように徐々に正常化させなくてはならない事に起因します。 

◆温度を下げる

温度を下げるのも30℃を超えているような場合は有効です。
でも、その時点で20℃から25℃なら下手に下げないほうが金魚の残された体力を奪わなくて済みます。

逆に 温度を上げる 場合の応用例
また逆に冬場などに加温しなくてはいけない場合も、アンモニア濃度とpHを検査してから加温して大丈夫か判断してから行動すれば加温後急に金魚が苦しみだすという問題も経験させずに済みます。 冬場長い間水換えしていないとかフィルター掃除していない時は是非検査してみてください。 またその時は検査する水を採取後一旦20℃から30℃に温めてから検査薬を投入する事をお忘れなく。

このように正しい知識があれば水質検査は見えないものを可視化して僕たちの飼育の判断をサポートしてくれますのでとても便利です。

◆アンモニアを無力化する薬を入れる


水作 API アンモロック 118ml
最後の手段として(おすすめしませんが)アンモロックなどを使って無害化するのも有効です。
ただしそのあとのアンモニア検出がしばらく出来なくなる事や薬品を水槽に入れる事による様々な問題が出ると思いますが、これらに対して1つ1つ自分で対応する必要が出ます。

上記3つの対策の中では圧倒的に水を替えるのが安全で確実です。
可能な限り時間をかけて水を替える事で対応してください。

念のために書いておきますが

◇pHを酸性にする

と言う方法は使えません。
ストレスが最大になっている金魚に対して全ての基本となるpHまで変動させてしまうと軽い毒性でもやられることになります。
この件に関して意図的なpHの変動は起こさないようにしてください。

※日中外で飼育している金魚の場合、治療目的で室内に移動するだけでpHが中性側に変化するのは問題ありません。
青水なら軽く9を超えていると思いますし、苔や水草が多い場合も青水の値マイナス1くらいまで上がる事が多いと思います。(←現時点までの屋外飼育で記録を取ったデータによる)

最後に

いかがでしょうか?
アンモニアは常にゼロであるべきですが、万が一検出された場合はそこで終了するのではなく
続けてpHと温度を調べて対応を考えなくてはなりません。

正しい検査方法をマスターし、それで得た値を使って正しい判断をする術を身につければ、未然に防げる事がより多くなりますので、より安全で楽しい金魚飼育が実現できるのではないでしょうか。

今後も同様の記事やケーススタディを通じて、より実用的で具体的な検査薬の使い方をご紹介していければと思っています。