この記事は 前回の記事の <後編> です。
未だお読みでない方はどうか<前編>を先にお読みください。
話は前編から後編につながっています。
音
騒音レベル | |
上部式フィルター | 流水音+ |
投げ込み式フィルター | エアレーション音 |
外掛け式フィルター | 流水音 |
水中ポンプ式フィルター | ほぼ無音(設置条件により流水音) |
無視できない方も多い音
音に関して敏感な方と気にしない方の差は大きいですし、寝室と水槽の距離などによっても気になるかどうかに大きな差が出ます。 つまり昼間なら許せる音も夜間就寝時に聞こえて寝られないという事もありますのでそのような設置場所をご検討ならこれは重要な要素です。
水中ポンプ式はそのまま水中に設置するだけなら音は聞こえません。
ただし付属品を使ってシャワーのように水を出す場合は流水音がします。
投げ込み式はエアポンプと組み合わせて使用するのでそのエアポンプの動作音が聞こえますし、エアーがはじける音も聞こえますが、この2つはほとんど聞こえないレベルのものが多いので普通なら夜間でも気になりません。
うるさめのエアポンプを耳元で動作させたまま寝るのは問題ありかもしれませんが、間に薄い壁など遮るものがあればほぼ無音にできます。
ここではエアポンプを選ぶことに注意してより静かなものをお選びください。
例外的にお部屋の仕上げ材が全て硬質仕上げ材の場合は気になる場合があります。特に天井の仕上げ材が重要です。 会話がエコーを伴うような部屋、電話で話しにくいような部屋の場合はこの程度でもうるさくなることがありますのでご注意ください。
最後に最も大きな音、流水音です。 決して不快な音ではなく涼しげで心地よい音ですが就寝中に耳元で聞こえる場合は不快に感じる方が多いと思います。 流水音は水が落ちる落差でも大きさが変わりますので、その辺の調整で無音に近づける事は可能ですが決して無音にはなりません。落差を減らすために限界まで水位を上げると音は小さくなります。 1つだけ注意として、上部式フィルターは排出される水が空気を伴い流れ出してくるのでゴボゴボと言う音を出すことがあります。 この場合は一度ろ過装置内を組み直すと直ります。夕方くらいまでなら簡単に直せますが夜中就寝中に起きると手も汚れるし直せないので朝まで電源をOFFにして寝たこともありました。 隣の部屋ならドアを閉めれば聞こえない程度かと思いますが、寝室に近い場所又は寝室内に水槽がある場合はご注意ください。
※水位はご利用の製品の説明書に示されるものを必ずお守りください。
エアレーション
エアレーションの要否 | |
上部式フィルター | 原則として不要 |
投げ込み式フィルター | これ自体がその一部 |
外掛け式フィルター | 原則として不要 |
水中ポンプ式フィルター | 設置条件により不要 |
原理と必要性
濾過バクテリアと金魚は酸素が必要な生き物なので少しでも多くの酸素を水中に溶け込ませるためにエアレーションと言う文明の利器を使います。
通常はエアポンプで空気を水中に送り込んでそれで水流を作る事で酸素が少ない底の水を上げて水面で空気に触れさせることを繰り返して酸素を取り込みます。 これはポンプで直接行う事も可能なので底の水を水面付近に上げるように設置すればエアレーションは不要になります。
今回比較している4つは全てエアレーターと呼ぶことができる機能を併せ持っていますのでその点に関して簡単に・・・。
水流と更なる空気接触を利用したエアレーター
特に上部式フィルターは底の水を吸い上げ、トレーのような場所に水を流してからシャワーのようにろ材に降り注ぐようにする方式が主流ですので上部式フィルターに付属の蓋(カバー)を使用しなければ新しい空気に触れる時間も非常に長いのでエアレーションが不要になります。 蓋を使用したり排水が音も無く横方向に出るだけだとエアレーション効果は低くなるので補助的にエアポンプとエアストーンが必要かもしれませんが流れる水が十分に空気に触れるように設置すれば無しでも問題ありません。
空気を利用したエアレーター
投げ込み式フィルターはエアリフトと言う空気が水を持ち上げる原理を利用して底の水を水面に上げますのでその作用自体がエアレーションになります。その為別途エアレーションを加える必要はありませんが、水流が弱いと思われる場合、水槽が広い場合、プラ舟のような広い容器で飼育する場合は離れた場所に1つ2つエアレーションを追加するとより効果的です。
またこの考え方の応用例として、広い水槽ではMやLサイズの大きなものを1つ使うよりもSサイズを2つ3つ使うほうがエアレーション効果を分散出来て効率よく酸素を取り込めます。 更にこの場合は濾材の交換時も順番に交換すれば濾過能力も高く維持できます。
水流を利用したエアレーター その2
外掛け式も上部式フィルターほど空気に触れる時間は長くないもののほぼ同じ原理で原則としてエアレーションは不要です。 でもカバーを付けて運用する場合や吸い込み口(ストレーナー)が十分い低い位置に降りていない場合はエアレーションを併用したほうが安心かもしれません。
水流を利用したエアレーター その3
水中ポンプ式フィルターは普通に設置しただけだとエアレーションが必要な場合もありますが、吸い込み口が水槽の底付近になり排水口が水面付近になるように設置して水を循環できればエアレーションは不要です。 また付属のアクセサリーでシャワーのように水面に水を落とすとエアレーション効果は最大になります。
※もはや横で寝るとか騒音がどうとかというレベルではなくなります。
これは大きな池を使っている養殖場さんでポピュラーな噴水式のエアレーターと同じ原理です。
餌の吸い込み
フレーク餌の吸い込み | |
上部式フィルター | あり |
投げ込み式フィルター | ほぼ無し |
外掛け式フィルター | カバー無しだとあり |
水中ポンプ式フィルター | ほぼ無し |
水中を浮遊する餌の問題
フレーク餌やブラインシュリンプを与える時にできれば全て金魚の口に入ってほしいですが金魚よりも先にろ過装置が吸い込んでしまうという事件が日本全国で多発していると思われます。
これは上部式フィルターあるあるですが、その他の濾過装置でも条件次第では起きますし、上部式フィルターでも以下に紹介する方法で予防したりも出来ます。
予防のためのアイデア
まず根本的に、これを予防したい場合にろ過装置を一時的にOFFにして餌を与えるという方法を取るのもアイデアとして良いと思いますが生きている餌は隙間があればそこから逃げ込みます。 つまり物理的に侵入できない構造になっている事が理想的ですが、現在市販されている全てがそのような構造ではありません。ブライン・ボウフラ・スネールの小さなものは全てろ過装置の中に逃げ込むことが可能です。
これを可能な限り予防するためストッキング素材のカバーをかぶせたりスポンジをまいたり色々試しましたが一長一短があります。
これらを行うと綺麗に餌が表面で留まるので金魚が残さず食べてくれるようになります。ただし徐々に汚れてくることや肉痩せする事で目詰まりを起こします。
ストッキング素材は思いのほか早く目詰まりしますので交換周期が短くなりました。 スポンジをまくという方法も試しましたがしばらく使用してスポンジが肉痩せしてくると穴が無くなる事で通水しなくなりポンプで水が吸い上げられなくなり空回りを始めました。
危険なのでこの2つの方法はやめました。
長時間空回しになると発火の恐れがありますのでご注意ください。
現時点では一時的に電源をOFFにして給餌するのが現実的で安全です。
もちろん中粒餌などは吸い込まれませんので餌を選ぶことでも対応できることがあります。
水位の自由度
水位制限 | |
上部式フィルター | 一定の高さ以上を維持する必要あり |
投げ込み式フィルター | 自由 |
外掛け式フィルター | 一定の高さ以上を維持する必要あり |
水中ポンプ式フィルター | 水位により設置出来る方向や形態が影響を受ける |
投げ込み式は自由
投げ込み式はウォーターポンプを使わない方式なので水位は本体の高さより上なら問題ありません。
ウォーターポンプ系は水位が重要
それ以外はウォーターポンプを使う関係から水位が重要です。 現実には既定の水位よりも低くでも使用できますが、落水時に過度な水流が起きたり、音が大きくなったり、最悪の場合水切れを起こして空回りしてモーターが発熱し事故になる事もありますので 既定の水位を守る必要があります。
また水中ポンプ式フィルターは縦でも横でも設置できますが水位が低いと横向きしか選べません。同様にエアレーション効果なども落ちますので設置に工夫が必要です。
このようにウォーターポンプを使う濾過装置全てにおいて水位は非常に重要ですのでご検討の際は想定される使用条件を確認の上お選びください。
耐久性
耐用年数 | |
上部式フィルター | 5年から10年クラス |
投げ込み式フィルター | エアポンプ次第 |
外掛け式フィルター | 5年から10年クラス |
水中ポンプ式フィルター | 5年から10年クラス |
投げ込み式はエアポンプに依存
投げ込み式フィルターはエアポンプの耐久性に依存しますので、本体は自身の形を維持している限り使い続けられます。 エアポンプの寿命は内部のゴムとプラのパーツ次第ですがこれは交換パーツもありますし自分で直す方法もあります。
これまでの使用経験から、連続使用でもだいたい3年から5年くらいで問題化すると思います。ですので3年から5年経過したらエアの強さをご確認ください。新品の時と変わりなければ大丈夫ですが、エアが弱い少ないと感じる場合は中を開けて確認してみてください。
蛍光灯に似ていて連続使用しているもののほうが寿命が延びます。一度使用したものを例え1カ月・2か月でも使用をやめてしまうと空気弁に溜まったカスが固まったり、ゴム部分が劣化したりしますので、使用を中断していた時は使用前にその部分をメンテナンスする必要があります。直らない場合はパーツを交換する事で対応可能です。
残る交換パーツはプラストーンくらいですが寿命も長いですし1つ100円前後なのでここでは考慮に入れない事とします。
※プラストーンは目詰まりしただけなら交換しなくても1日~2日塩素水につけると綺麗になります。
水中ポンプ系はインペラーのハネに注意
投げ込み式以外のものは全て水中ポンプを利用して水を装置に送り込んでいます。
この水中ポンプで回転している部分(インペラー)が摩耗したり破損したりするとポンプが使えなくなります。
通常使用なら5年以上の連続使用でも問題が出たことはないですが、砂など摩耗や破損を促進するものが水中にあるケースだと意外に早くインペラーがやられることもあるようです。
ここで問題なのがインペラーだけを購入する事が比較的困難なモデルが多く、パーツとしては水中モーター部分丸ごと購入の必要があるケースが多い事です。 また幸運にもインペラーが単独で販売されているモデルでも1つ1000円前後しますので場合によっては新品を購入するほうが良い事もあります。
どの製品も濾過フィルターとしての本体部分の耐久性は非常に高くプラスチックの材料寿命まで使用できると思えるほどしっかりとした設計ですので、気にすべきは可動部分。特に水中ポンプのインペラーだと思います。 まあ砂などが無ければ普通の使用において十分に価格以上の寿命があると思います。
おまけ
投げ込み式フィルターは、安価でエアポンプと分岐コネクターさえあれば簡単に1つ2つ追加で増やすことが出来ます。 急に金魚を追加購入した時、一時的に保護観察するなど”臨時”で水槽を立ち上げる時などにそれを簡単に行うアイデアとして、普段からメインの水槽に予備にこの投げ込み式フィルターのSかMサイズを1つ入れておけば直ぐに臨時水槽を立ち上げられます。
水中ポンプ式フィルターは自作ろ過装置を作る時の定番ポンプになります。 いろいろなアイデアでろ過装置をデザインして、それを動かすのに使えます、値段も比較的安価で弱いポンプからパワフルなポンプまで手に入るという点でもDIY派には人気です。
またこのタイプ以外も含まれますが、吸盤で固定するタイプはどうしても微妙な隙間が空くので小まめな掃除をしないと水槽の壁との間にゴミが溜まって見た目も環境も悪くなりやすいので掃除が苦手な方はご注意ください。
今回は出てきませんが水槽のコーナーに設置する三角のタイプは特にこの点が問題化しやすいです。 綺麗好きの方なら問題ないですが、僕のような性格の方は簡単に移動できるタイプのものをお選びください。
まとめ
いかがでしょうか?
製品カタログなどには記載されていない事を中心に独自の切り口で問題や懸念事項を挙げながら比較してみました。
実際に使ってみると色々な事が気になったり、面倒だったり、時には我慢できなかったりします。
飼い主の方の性格や生活のリズムや管理している水槽の数で最適な選択肢は変わると思いますので、無駄な買い物をして押入れの肥やしが増えないようによくご検討ください。
最後に僕自身の経験内での判断ですが上部式フィルターは他のろ過フィルターよりも濾材の量が半端なく多いので安定感は抜群です。諸条件を考えると不利な事が多いですが”安定感”を重視される場合はこれ以外にない(あとは自作するほかない)と思う程の安定感があります。 バクテリアが弱い間や飼育に慣れない間は非常に心強い味方になる事でしょう。
一方で、安定感が殆ど無いのが投げ込み式フィルターと外掛け式フィルターです。でも、投げ込み式フィルターは とにかく定期的なメンテナンスをしてないと安定を維持できない という弱点が逆に初めての方には最大の長所となります。 と言うのも金魚飼育を始めたばかりの時期は不安定になりやすく簡易リセットを繰り返す方も少なくないと思いますが、投げ込み式フィルターは少なくとも数カ月に1回は分解洗浄と言う形で簡易リセットをする事になりその繰り返しで管理していくものなので大きな問題が蓄積されにくいという点で非常に安心です。 ある程度慣れてくれば飼育の常識が整うので無茶な事はしなくなりますが、僕のような方はそこに辿り着くまでにいろいろな事件を起こしますので、そういう方にとっては問題を長期的に持ち越さないこちらのほうが安心です。
という事で初心者の方にお勧めなのは 上部式フィルター または 投げ込み式フィルター です。
※外掛け式はコツがあり慣れが必要なのでここではオススメ候補から外します。
※水中ポンプ式は慣れてくれば良い選択肢ですが、事故を予測できない間は選ばないほうが良いと思い外しました。
僕の場合は上記の条件1つ1つを考えて現在は一部の自作水中ポンプ式ろ過装置を除くと全て投げ込み式フィルターで維持しています。 自分の性格や飼育方法にあっていると判断して切り替えましたが、長年上部式フィルターを使ってきて寝室の隣の金魚部屋からの流水音を子守歌に寝ていた僕にとって、夜間音が殆ど聞こえないという事がこれだけ快適だったのか・・・と驚きました。今はもう戻れませんw
実家で自室内で金魚を飼育されている方など寝る時も音が聞こえる条件になる方は特にこの点をお考えいただければと思います。
これまでに僕が使用してきた感想はこんな感じです。
皆様にとってのベストがどれになるか購入前に色々比べてみてください。
感じる事は人それぞれですし、
慣れてしまえば気にならない条件と、絶対に慣れる事が出来ない条件、色々ありますので経験しないと分からない部分もあるかと思います。
良さそうなものをまずは1つ買って使ってみる事で更に色々分かると思いますが、 まずはこの記事をお読みいただき
「こんなはずではなかった」
となる事を予防していただければ幸いです。