新基準で安全性が格段に向上したと言われている観賞魚用ヒーター。 気になったので1つ購入してみようと思いジェックスの セーフカバーオートヒーター SH160を買いましたので、レビューしてみます。
シャトル構造デザインと安全対策
この製品を購入しようと決めた理由の1つがこのシャトル構造と呼ばれる安全性の高いデザインです。独自のボディ設計でヒーター部分と制御部分を完全に分離して並列配置しています。
このように分離する事でオートヒーターの最大の欠点である全てを1か所に詰め込んでいる事による内部熱問題や防水破損時のリーク問題のリスクを最小にしています。
縦配置も可能
またこのボディ設計により、160Wという高出力のヒーターとしては比較的コンパクトなサイズに仕上がっているので縦でも横でも水深をさほど心配せずに設置できます。
個人的には太くて取り回しのきかない電源コードをL字に曲げたりするのは好きではないというか断線などが気になるので、縦向きでストレートに伸ばしたまま設置できるのはとてもありがたいです。
写真の赤い部分がヒーター部分、青い部分がサーモを含む制御回路部です。
縦置きならヒーターの熱は直接制御回路部を通過しませんので問題ありません。
横配置には向きがある
またヒーター部と制御回路部が並列配置なので、横向きに配置する場合はヒーター部(長いほう)が上に来るように配置しないと正確な水温コントロールが出来ません。
下の2枚の写真は上の写真が正しい向き、下の写真が間違った向きになります。
▲ 東急ハンズのロゴ(正しい向き)
▲ 新幹線ゼロ系(間違った向き)
熱は上昇しますのでヒーターよりも上にサーモスタットが来るとサーモが直接温められてしまい実際の設定温度よりも低い水温なのにサーモ部が十分に高温になる為OFFになります。 このような誤作動が起きないようにヒーター部が上になるようにしてサーモスタットは下でヒーターの熱を直接受けないように水温を正確にモニターできるようにしなくてはいけないというのが横配置の時に向きが決まっている理由です。
かんたんバージョンの説明としては
上の写真の赤い部分で熱が出来ます。
熱は上がろうとします。
赤い部分の真上に青い部分(温度センサー又はサーモスタット)があるとその熱で十分な温度になったと勘違いしてOFFになるので水温が上がらないという問題が出るという事です。
つまり赤い部分の上に青い部分が来ないように配置するのが正解なので、
上が長くて下が短いのが正解になります。
東急ハンズの手のロゴみたいな形が正解と覚えていただければと思います。
新幹線ゼロ系はNGと覚えてください。
※東急ハンズのロゴと言う例えは無理やり感があると自覚してます。
左右も逆ですし。 もし良い例えがあればお教えください。
輻射熱反射シール
もし間違って新幹線ゼロ系配置してもその問題を最小限に抑える工夫もされているようです。見たところ制御部と思われる側には銀色のシールが貼られています。
これはサーモがより正確に飼育水からの伝導熱のみで水温を検知するように、つまりヒーターからの輻射熱を直接受けないように反射するようにシールが貼られているのだと思います。この辺も日本らしい芸の細かさです。
強化されたガラスボディ
そしてこのデザインで内部の回路を守っているのがガラス製のボディ。
新しい法規制の要求事項をクリアするための選択だと思いますがガラスは従来のヒーターよりも分厚いものが採用されています。
正直この厚みは非常に嬉しいです。
昔の規格のヒーターではケース部分は1㎜厚のガラス管が使用されていたと思いますが、これは見た目と重さから2㎜以上ありそうです。厚みをイメージしやすい例えをするなら小さなビーカーの厚みがあります。
形状から試験管と書いてしまいそうになりますが、厚みと言う意味ではビーカーの厚みです。試験管ほど薄くありません。
しかも白色ではなく透明ガラスなのでひび割れなどがあれば見つけやすいのでこの点でも気に入っています。 また透明なので中が見えますが、砂時計の砂のような白いガラスのようなパウダーで充填されていてヒーターの熱を効率よく外側のガラス管に伝える役目をしているようです。 更に画期的と思ったのが(透明なので)夜間に使用していると中で赤々と熱を出すニクロム線が透けて見える事があるようです。(残念ながら僕のは夜間確認しましたが見えません) 赤外線も見える金魚には更に色々見えてるんでしょうけど、どうせならニンゲンにも、もう少しニクロム線が見えるようなデザインや演出があると格好いいのにと思いました。夜間走行してるレーシングカーのブレーキディスクみたいで綺麗だと思うんですが・・・。
重くて安心
ガラスのボディが分厚くなったおかげで重量が重くなったので昔のヒーターのように吸盤が外れてしまった後に(金魚やコードによる外力程度では)簡単に水面に浮くような事も無いと思ます。 手に持った感じでもかなりずっしりとした重さを感じますので、何らかの理由で簡単に浮くという心配も少なくていい感じです。
キスゴム(吸盤)
ついでに吸盤に関して少し・・・
一番最初に設置した時は24時間以内に外れてしまいましたが、その後取り付け直してからは現在まで外れていません。 吸盤ってはずれ癖みたいなのが付くと、どんどん外れてしまいますが僕のは大丈夫みたいです。 保安部品や安全装置とは違うので検査も甘いかもしれませんが、水から出てしまわないようにしっかとガラス面に張り付いていてもらわないといけないのでその点では非常に重要なパーツだと思います。
強靭なセーフカバー
商品名にも「セーフカバーオートヒーター」と付いていますが非常に強靭なカバーが採用されており昔のヒーターカバーに比べると進化したんだなぁと思います。
ただし、このカバーの設計は最悪です。
UL94Vの燃焼試験でV-0グレードが取得できるレベルの(燃えにくい)樹脂で出来ている為、フレキシブルとは言えず非常に硬いので指の爪でカバーを外そうとすると折れそうになります。
ですので最初はマイナスドライバーを使って無理に力を掛けないように開ける必要があります。 何度か開け閉めしてると爪でも何とか開けられるようになりましたが、風呂上がりとかは無理だろうなと思う硬さは残ってます。
これは他社製品でも問題が指摘されているものがありましたが、カーボンを想像させるような硬くて扱いにく素材なので取り外しにくくなるのでしょうけど、例えば2ピースではなく3ピースやスライド方式にするなどすればより単純で簡単に脱着できるのにと思います。
この製品は必ずカバーを付けた状態で使用してください。
電気用品安全法の安全試験もカバーを付けた状態でパスしているのでカバー無しでは安全なヒーターとは考えられなくなる為、カバーを外した状態では使用を禁止されています。
安全対応も万全に
表面温度400℃以下と言う新基準
発売日が電気用品安全法改正前の2014年となっていますが、パッケージは既に変更されており、最新の基準に適合しているという事も明記されているので安心しています。 2015年の電気用品安全改正でヒーターの表面温度を400℃以下に抑える事が規定されました。
このヒーターでは空気中に出ても安全回路により通電が遮断され表面温度が異常に上がる事を防いでくれますが、古い製品を分解した時に蓄熱板にニクロム線を張り巡らせたような設計だったので、これもそれに準じているでしょうから、電源を切っただけでは、蓄熱板に熱が残っているので熱いままですので空気中に出すとどんどん表面温度が上がります。説明書に記載の温度では最高で300℃になるとなっています。
更に重要な取り扱い上の注意として、メーカーの説明書には
電源を切ってからも15分ほどは水中に入れたままにしておくように書かれてます。
理由は以下の部品です。
2重に守るための温度ヒューズ
第一段階の安全回路(温度センサー)が壊れて安全装置が作動しない時でも物理的に自らが壊れる事で通電を止める部品が付いています。 温度ヒューズです。通常その動作温度を60℃から100℃くらいの中から選ぶようなパーツで、保証される温度以下で確実に溶けてしまうものなので100℃で溶ける温度センサーなら90℃くらいでも溶ける事もあり101℃には絶対に上げない事で安全を担保する、そんなパーツです。 ただしこれは最後の砦なので、これが溶けてしまうとそのヒーターは二度と使えません。 だから安全装置が付いているからと気軽に空気中に出してしまうと第一段階の安全装置が作動する前に温度ヒューズが溶けてしまう事もあるので、基本的にコンセントを抜いて15分間は水中に入れたままにして、完全に温度低下してから取り出すようにしたほうが良いという事です。
でもこれでは金魚は守れない
現在の販売モデルはヒーターが原因となる火事の中で最も多い原因と言われる空焚きに関する対策は、かなり安全なレベルを維持できるものとなっていると思います。
ただしこの機能は金魚が茹で上がる事からは守ってくれません。
家が燃える事を予防するという点では大きな改善がなされていますが、誤作動で水がお湯になる事までは予防できません。
つまりこの製品単独では
焼き金魚になる事は最大限予防してくれますが
ゆで金魚になる事は以前と同じ安全レベルのまま進化してません。
この点は依然飼い主がきちんと管理して最悪の事態を避ける努力が必要です。
金魚を守る仕組みの作り方は別の記事でご紹介します。
今しばらくお待ちください。
保証期間2年
ここまでに紹介したポイントは他社製品でも同様の対策がされたものもあります。
僕がこの製品を選んだ一番のポイントはこれです。
通常1年で買い替えるようにと言われている日本の観賞魚用ヒーターで遂に2年間の保証をするという企業が出たと言うのはとても嬉しいです。
多分なんですけど、ジェックスは悪い意味で有名となってしまった観賞魚用ヒーターのリコール問題でイメージが悪いのでその挽回もありユーザー登録すれば2年と言う通常の倍の期間使用してもいいよ!大丈夫だよ!と言ってくれているのだろうと勝手に思っています。 違ってたらごめんなさい。
信頼回復の為に保証期間を倍にする・・・どこかで聞いた事のある戦略ですが、通常の倍の期間使用しても壊れませんよと言う自信の表れでもあると受け止めて、購入する事にしました。
裏にある大人の事情はさておき、1年で寿命って日本が経済大国だった頃の悪い習慣だと思うんです。今でもエレベーターや機械式駐車場は30年で新品に交換するみたいな業界ルールがありますがアメリカなんか100年以上直してエレベーター使ってますし、木製のエスカレーターでも400億円も投入してリノベして現役で動いてたりします。そういうのを見る度にスクラップアンドビルド専門で来た日本は贅沢なことしてるなぁと思ってましたが、観賞魚用のヒーターも同じことを感じます。
そんな中で1年が2年になったのは小さな一歩ですがとてもいいことだと思い、あえてジェックスのヒーターを買いました。応援するとか支持するという意味です。 1年で買い替えなんて馬鹿げてますので。
本当はジェックスとテトラは既に使用経験があるから今回は別のメーカーを試す予定でしたが2年保証と言う餌につられてまんまと「ワン」って吠えてしまった自分がここに居ます。ワン!
短かすぎるコード
観賞魚用のポンプでも毎回思いますがコードが短い。
このヒーターも90cmと非常に短いです。
例えば水深30㎝の水槽に縦置き配置する場合、ボディの縦の長さが約15㎝として
水中にコードが15㎝、外に出たコードを綺麗に配線するように一旦床まで下すのに30㎝とすると既に残りは45㎝しかありません。水槽をコンセントの真横に置くという危険な配置でもなければ届きません。更に水槽台を使ってればその高さ分長くないと届きません。 このような事から普通に考えれば少なくとも150㎝は必要ですし、余裕を持った配線で考えれば200㎝以上欲しいくらいです。
仕方ないから延長コードでコンセントまで繋いで使用してますが、水に濡れる場所で使用するので極力延長コードを使いたくありません。水濡れを警戒しなくてはいけないコネクションが増えるからです。
出来れば最初から長いコードで直接コンセントに差し込んで途中は一切切れ目が無いのが理想なのですが・・・
匂い問題
良く分かりませんが僕が手にした商品は病院みたいな匂いがします。
最初気づかず金魚に使用してしまいましたがこのヒーターだけで言えば48時間以上使用してその後常温に戻し、現在は水槽で元気に泳いでいますのでこの強い匂いの原因が何であれ、金魚には影響はありませんでした。
少し気になる強さで、ヒーター使用後ヒーターを取り出した後も水中に匂いが残る程で、しばらくしてから水を捨てた時にまだ薬品臭が水から出てました。”ザ・病院”って感じの匂いです。 個人的には好きな匂いなのでいいのですが、金魚が大丈夫か心配になる強さなので、現在も水に漬けたまま匂い抜きをしています。
レビューを確認しても誰も書いておられないので、念のため製品の箱の裏に記載の電話番号に問い合わせたら
生体には影響はございませんのでご安心ください
との事でした。 気になる場合は空気中に出しておけば匂いが徐々に飛ぶとの事でした。 生体には影響はないそうですが、僕のように気になる方は匂い抜きをしてからご使用ください。 生産ロットにより違うみたいなので全く匂わないものもあるようで、必ず匂いが確認できるわけではありません。 レビューに誰も書いておられないので稀にしか起きないのだと思いますが、当たると中々の強さに驚くと思います。
・・・が、問題は出ませんでしたので、ご安心ください。
念のため、同じような状況になった方の為の情報として書いておきます。
テストラン
僕は治療とリハビリでしか使わないのでせいぜい20Lくらいの水量までしかヒーターは使用しないと思いますが、60Lでも使える程パワフルな160Wの製品を選びました。
今回はその性能を見る為に10Lのタンクでテストランしてみました。
今回はエアレーションで水槽内の水を循環させました。
以下のグラフは仕事で使う温度計測器で1分おきに記録した温度を棒グラフにしたものです。
赤が室温
青が水温です。
まずは普通にSH160だけで水温上昇させてみました。
17℃から27℃まで108分と比較的早く温度が上がりました。
健康な金魚には問題ないと思いますが、病魚には早すぎるので病魚の場合は温度コントローラーを使用してもう少し速度を落としたほうが良いと思います。
若しくは
今回は10Lという水量に160Wヒーターでこの早さと言うことなので、もう少し大きな水槽を使うか、ワット数が低い機種を選べばマイルドな上昇になると思います。
上下温度を確認して制御範囲などを見てみようとしましたが、恐ろしく細かく制御されていて1分ごとにモニタしている温度が殆ど変化なしです。
想像では(もっと山と谷が出来るような)ONとOFFをもう少しハッキリとさせるような制御と考えてましたが、ほぼシームレスなON/OFFなのでこれではOFFの時間を算出する事も不可能です。何でも確認しておくものですね。テストランしてなければここまでシームレスな制御になってるとは想像もできませんでした。
治療目的の時に温度を極力一定に保つという仕事をさせるのには最適な性能と言えます。
一方こちらは温度コントローラーで最高25℃に設定し23℃まで落ちたら再びヒーターが入るという設定にして無理やりONとOFFを明確にして山と谷を作ってみました。 もともと僕の想像ではSH160単独でもこのような水温変化があると思ってました。
室温が低くても17℃くらいでたいして寒くないので30分弱ONになり30分強OFFになるという結果でした。 室温がもっと低くなればもう少しOFFの時間が短くなったりONの時間が長くなると予測できますが、まあ室温17℃でこれなら多少寒くなってもまだまだ余裕があるので非常に安全な運用が出来そうです。
※温度が25℃に達してませんが、温度コントローラ用のサーモセンサーとこのグラフのデータを採取する機器のサーモセンサーが別のモノで計測場所も少し違う場所なので今回は24.5℃でOFFになりました。
SPEC
製品名 | セーフカバーオートヒーター160 |
メーカー | ジェックス |
発売日 | 2014年03月04日 |
定価 | 4,100円 |
品名品目 | 観賞魚用ヒーター |
用途 | 室内観賞魚飼育用 |
適合水量 | 約64L以下・60㎝水槽以下 |
ヒーター保護カバー | 有り(黒色・V-0樹脂) |
定格電圧 | AC100V |
周波数 | 50/60Hz |
定格消費電力 | 160W |
制御温度 | 26℃固定型(温度設定精度±1.5℃) |
通電遮断機能 | 温度センサー&温度ヒューズ |
製品サイズ | 幅5.3x長さ14.4x高さ4.2㎝ |
コード長さ | 約0.9m |
生産国 | インドネシア |
保証期間 | 通常1年、ユーザー登録すると2年 |
その他 | トラッキング防止コンセント |
ジェックス セーフカバーオートヒーターSH160
この記事でご紹介した160Wで26℃固定のヒーターです。
温度コントローラーをお持ちでない場合は26℃固定でしか使えませんが、これと温度コントローラーを別々に購入する方法がお勧めです。
詳しくは、サーモコントローラーの記事でご説明します。
この組み合わせなら金魚がゆで金魚になる事を最大限予防できます。
この記事に続いて出せるか分かりませんが記事の完成を急ぎます。
今しばらくお待ちください。
※製品名は セーフカバーオートヒーター SH160 と表記していますが2017年以降に出荷されたものは セーフカバーオートヒーター 160 になっています。
また略称にはH160とHが残されているようです。
僕はアマゾンから購入しましたがSH160と表示されていたのに届いたものには160しか表示されていなかったので、新旧に関して問い合わせてみて判明しました。
▼2017年11月現在、最新のパッケージはこんなデザインです。
※この製品にそっくりの製品で スタンディ というシリーズがありますが中身は全く同じものです。 販売ルートが違うという事や、生産国が違う事など諸条件は違いますが性能的には同じ製品だそうです。
匂いの件を問い合わせた時についでに聞きました。
最新のヒーターの安全性や安全な使用方法に関しては以下の記事をご覧ください。