地震で倒れない水槽台

地震で転倒しない水槽台を考える

金魚の水槽を置く為に市販の水槽台を購入する方や、水槽台ではないスチールラックに水槽を置いておられる方が多いと思いますが、地震の時に安全でしょうか?安全かどうかご判断いただける様に確認すべきポイントと基本事項を中心に書かせていただきます。

地震に強い水槽台の基本条件

強度と剛性

ここでは単純に
強度とは壊れにくさの事で
剛性とは変形しにくさとお考えください。
普段は単に重力が下向きにかかるだけですが
地震の時は左右に移動荷重が加わります。
それにより水槽台が変形や崩壊をしない為には強度と剛性が必要となります。

水槽台として市販されているものは水槽を置いて満水にしても耐えられる強度で設計されているはずですが、中には見ただけで剛性が足りてないと分かる製品がちらほらあります。

買ってはいけない水槽台その1

MDFパネルを組み立てるタイプ
接合部分がぐらぐらしてくる例

木製でも角材を使っていれば良いのですがパネルを組むものの一部は徐々に剛性が落ちてきて最後には崩壊します。これはパネル材の種類でも大差がありMDFなどは最も避けるべき材料になります。MDFとはチップを接着剤で固めたものですが時間と共に結合が緩むのでビス止めしてる部分が徐々にぐらぐらしてしまい長期使用する水槽台としては怖いです。
無垢材を使用してるならパネル式でも問題ないのですが無垢材使用の製品は非常に高価です。安価なものは水槽台に限らずIKEAの家具でも殆どチップや端材を接着剤でくっつけたパネルが使われています。
安価でパネル式で木製の水槽台の購入検討の際にはそのパネルがどのような材料なのかご確認ください。

また木製パネルの水槽台の場合は扉が付いている事が多いと思いますが言い換えれば側面4面のうち1面は耐震強度ゼロの扉なので水槽を支えているのは残りの3面という事になります。
この点でも角材を柱にしているタイプに比べると面で支えるタイプで3面しかないものは地震でねじれ現象が起きやすく安心感が低いものとなります。

買ってはいけない水槽台その2

一般の金属製ラックで全てビス止めするもの
接合部分がぐらぐらしてくる例

★ ジョイントパーツがあるものは問題ありません。
★ 差し込み式で最後の固定にビスを使うものは問題ありません。
これらは剛接合と言って部材の強度が十分なら剛性は高く維持できるタイプです。
問題なのはピン接合でブレースを使って補強するような設計のスチール台です。粗悪品はブレースすらついてきません。

ビスだけで接合するタイプは絶対に水槽を置いてはいけない例です。
基本的に書類などを保管するスチール棚に多いタイプですが少なくともブレースが無いと左右に揺れやすく全体が変形しやすいので危険です。

何よりも接合部が全てビスでとまっているという事は可動する事を意味します。
組み上げた時はがっしりしてると思いますが、日に日にビスが緩んでくるとぐらぐらしてくるので怖いですし、ブレースも貧弱なものをビス止めするだけのが多いので地震力で破断するともはや崩壊を止めるものは何も無いので恐ろしいです。

書類なら雪崩になってもまた組み立て直して並べればよいですが、水槽なら倒れてガラスが割れ、水が出て金魚も危険になるのでこのタイプの水槽台への流用は避けたほうが良いと思います。

買ってはいけない水槽台その3

L字型の断面を持つ柱のタイプ
材料自体の剛性が低い例

通称、アングルと呼ばれる部材を柱にしているスチール水槽台は避けて下さい。
同じ断面の場合ロの字のチューブタイプに比べると圧倒的に曲がりやすく地震力がかかると水槽が傾く事があります。 これも地震が起きてない時は下向きの重力だけなので強度は十分ですが、剛性が足りてないので地震の事を考えると重い水槽を置くには向いてません。地震が起きないという前提なら問題無いかもしれませんが日本で使うのは避けたいタイプです。 

ただし、L字でも肉厚が4㎜以上あるような重厚なものは問題ありません。

※幅4㎝、高さが60㎝程度で計算しています。背が高くなるほど肉厚が必要です。
※ここで想定している材料はスチールです。

高さh

全ての水槽台共通の事ですが重心は低いほうが倒れにくいです
つまり選べるなら水槽は低い位置にあるほうが安定するという事です。
過度に背が高い水槽台は非常に危険です。

詳しくはこの先に出てきます。

底面X-Y

仮に水槽台の底面を構成する横の長さX、奥行きYとすると
X又はYの短い方の長さが重要になります。
水槽台の場合は、通常、奥行きYの事になりますが、これが短かすぎると非常に倒れやすくなります。

地震で水槽台が倒れないかの具体的な判断基準

高さ底面比

実はこの【高さ】と【底面の短辺の長さ】の比率が非常に重要になります。
高さh ÷ 底面の短辺長さ(XかYの短い方)=BLAとすると
BLAが小さくなるほど安定感が高くなります。

別のいい方なら
高さが低くて
底面(XかYの短い方)が長いほうが安定します。

ちなみに
高さと底面(XかYの短い方)が同じ長さの事をBLA=1と呼びます。

地震に対して倒れないという圧倒的な安心感が必要な場合、BLAの値は1以下が必要ですが、自作しないとなかなかない数値かなと思いますし、通常はそこまで必要ありません。

BLAが2以下くらいならある程度の揺れに耐えると言えます。
市販の水槽台は大体2くらいです。

ここでBLAが3とか4になると、かなり危険度が増し小さな揺れでも転倒する可能性が劇的に上がります。

市販の水槽台では3とか4は見たこと無いですが、普通のスチールラックを水槽台としてご利用の方はあり得る数字ですので上記のBLAが幾らになるか計算してご判断ください。

ここで倒れるとはどういうことか?ですが
全重量の半分以上がセンターラインを越えて外に出る事です。

数学が苦手な方も居られると思いますので計算による証明ではなく図による証明でご説明しますとこんな感じです。

★水槽台やスチールラックを(正面ではなく)横から見ているとお考えください。

水槽台の倒れにくさの解説図

対角線で左右に分けて考えれば簡単に分かります。
縦に長いほど簡単に倒れる事の証明です。

BLAが1だと45度以上傾かないと倒れません。
BLAが2だと26度傾くとアウト
BLAが3だと18度傾くとアウト
BLAが4だと14度傾くとアウトです。

短辺と高さが同じである
BLA=1というのが完全安定ラインです。

ですので既製品の水槽台を購入される場合は、水槽台は出来る限り低いもの又は短辺が長いもの(言い換えれば長辺と短辺の差が小さいもの)をお選びください。


※上記の角度は近似値に改めています。
※シンプルにする為水槽の重量バランスや地震力の影響は無視しています。
 実際はこれより遥かに複雑な事が起きますが基本はここに示すような事の複合です。
※上記の説明では水槽台が均質な部材で出来ていて重量バランスが均質という条件です。 
 これは実際の水槽台とは少し条件が異なりますが、
 大きく結果が違う程では無いと考えています。

最後に

仕事柄、書籍、カタログ、紙の資料、設計図書など大量に保管する必要があり良いスチールラックには詳しいのですが、これらは水槽には使えません。

アマゾンに良さそうなものは何点かあるものの、実際に使ってみないと細かな事までは分からないので、今回はお選びいただくときの注意点を書くだけでお勧めを何点か提示する事が出来ませんが、通常あまり解説されない専門的な視点から記事を書いてみましたのでご購入の際の製品選びの参考になれば幸いです。

8件のコメント

  1. *こんにちは~ タイムリーな話題ですね(^^ 
    私もL型・ビス留めものと □断面・差し込み型のを使ってます~
    確かに前者は経年で緩くなってきますし、ビスが錆びていたりしますね;;
    またどちらも滑り止め部(凸)が無くて・・・横滑りも心配かな?? と・・

    で、例えば2段設置(60cm水槽を2段)置いた場合の理屈等も お聞きしたいな~ と思いました。
    1段・上部設置よりは安定すると思いますが、金魚部さんの表現で♪(^^

    • azzaroさん こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      ◆2段置き
      そうですね、2段あるなら下もおいたほうが全体の重心が下がるのでより安全です。
      その場合はBLAも多少大きくても安定感が増すので安心です。
      市販の水槽台(BLA=約2)で2段式ならかなり安心な選択肢と思います。
      勿論、強度と剛性がきちんとあるのが前提です。

      ◆横滑り
      横滑りに関してはデータが少なくて分かりません。

      水槽台ではない台に置いてる方で台が傾いて落ちかけてるのは見たことがあります。
      確か底の車輪が1つ折れてそのまま傾いて止まってたような例でした。

      ご心配であればオールガラス水槽用のウレタンシートを購入し台と水槽の間に敷かれるのはいかがでしょうか?
      直置きするよりははるかに大きな摩擦抵抗が出来ますのでより安心です。
      この記事のTOPのイラスト(レンガの水槽台のやつ)の水槽と台の間の黒いのがそのウレタンシートのつもりで描きました。少し厚めですけどw
      ウレタンシートは滑り止め効果だけではなく重量を均等に分散してくれますので、揺れた時に出る歪みや底面への局部的な応力集中も逃がしてくれてオールガラス水槽には必須アイテムです。

  2. 金魚部さん
    こんばんは、ayatです。

    関西の地震心配しておりましたが金魚が無事で一安心しました。
    大事なくて良かったです。
    (15Lは大事かもしれませんが、、、)

    ただ地震は他人事ではないので今回の記事、自分のケースに当てはめてよく考えてみました。
    キューブ水槽の為水槽の転倒は考えづらく、また台を使っていないために台の転倒もありません。
    (名前がわからなかったのですが、キッチンから料理を出すところに置いています。電話の親機がありそうなイメージのところ)
    ただ、マンションの上の階なので振幅が増幅されて揺れによって滑り落ちるのが一番有り得そうなのですが、その場合何かよい滑り止め対策はあるでしょうか?

    • ayatさん こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      滑り止めとしてはオールガラス水槽用のウレタンシートなどがお勧めです。
      摩擦力を増すのに大切なのは少しでも多くの面積で接地する事です。
      言い換えれば粘着力の高い素材で部分的に止めていてもその面積が小さいと効果は小さくなります。

      また粘着性の滑り止めの問題として
      ◆ゴミが付く
      ◆水槽のメンテナンスがやりにくい
      ◆底面全てに使うと外せなくなる
      などが考えられます。

      更に恐ろしいのがワイヤーで固定する場合です。
      ガラスというのは曲げに非常に弱い素材です。
      ワイヤーで水槽を固定すると必ず点や線で固定されますのでその部分に全ての力がかかります(応力集中)
      地震の時は加速度の影響でその重量の数倍以上の力がかかります。
      30㎝キューブが30㎏として100㎏以上の力がガラスの端部にかかれば割れることもありますので紐やワイヤーでの固定だけは避けて下さい。

      常に底面全てを台に密着させることで摩擦力を最大とするのが安心です。

      最後にマンションの場合ですが、上のほうの階にお住いであれば一般住宅とは少し事情が違います。
      長周期動が加わるからです。
      建物の高さが高いとその分揺れる幅が大きくなります。
      振幅も1mを超えるような場合がありますが、行ったら必ず帰る必要があるので、振幅が最大まで曲がれば元に戻ろうとします。
      この返しの瞬間に水が最も多く流れだします。
      機会があれば実験映像を作ってご覧頂こうと思いますが長周期の水の動きはとても怖いです。
      高層階にお住いであれば如何にして水をこぼさないかを重視したほうが良いです。

      この記事では台が倒れるかどうかを重視して書いてますが、そもそも45度も傾けば水は殆どなくなってるでしょうし、金魚もその勢いで飛び出してると思います。(水面付近が大好きな男梅(バルーンオランダDさん)なら楽勝で飛び出してます)つまりここまでくれば倒れる前に被害の殆どは完了しています。
      今回なんて一切台は浮かずに15Lも床に流れ出しました。傾くような事があればもっと大量に出ていたと思います。

      まずは順序として設置環境が信頼できるかという事で台の記事を書きましたが、僕としても台を補強したら次の目標は如何にして水をこぼさないかになります。

      アイデアはあるのですが実際にモデルを作って検証しないと効果がどのくらいか分からないのでまずはモデルの制作をしようと思い材料を探しています。

  3. 金魚部さん
    お返事ありがとうございます。

    なるほど、水をいかにしてこぼさないかが第二弾の予防なのですね。
    たしかに水槽が倒れなくても中身が飛び出せばそれで終わりですしね、、、
    金魚部さんのアイデアが形になる日を楽しみにしています!

    • ayatさん こんばんは。
      お返事ありがとうございます。

      そうですね、早くパーツを探して検証して記事にしたいと思います。
      理想のパーツが見つからないのでとりあえずは代用品を購入してきました。
      仕事の切れ間に急いで作って実験してみます。

  4. 金魚部さん、こんにちは。
    いつぞやリクエストした地震の記事をありがとうございました。
    じっくり拝見して、水槽台を点検させていただきます。

    そのうち起きると思っていたら意外にすぐに起きましたね。
    関西は関東よりも頻繁に地震はないイメージですが。
    金魚部さんと金魚がご無事で何よりです。
    このところの地震の多さを考えると、それなりの大きさの地震を、
    西の金魚部さんと東の私がそれぞれあと5回ずつくらいは体験してもおかしくなさそうです。
    リスクと被害はできるだけ減らしたいものです。

    • Tokoさん こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      いやぁ、リクエストいただいたものとは大きく違う記事で申し訳ないです。
      本当はスロッシングの事や長周期の事などを交えて詳しく説明したかったのですが
      一度は書いてみたものの難しくなりすぎたので途中から消して
      結局最も伝えたい事として「高さと短辺の比」の話にフォーカスしました。

      実際の挙動を考えるとこれでは説明不足ですが
      かと言ってガチガチに守るような内容にしても365日それで暮らすのか?
      そんなにお金をかけてまで補強する必要があるのか?など
      突っ込めば突っ込むほど新たな矛盾を生むのでシンプルにしました。

      目の前にクライアントが居て対象の家が分かっていれば
      その構造や形や部材強度などからかなり絞り込んだ話が出来ますが
      平屋とタワマン最上階では違いますし、軽鉄とRCでも大きく違うのでそうした条件を無視できるくらい基礎的な部分にフォーカスしたわけです。

      ただ僕は持ち家ではなく下には他人が暮らす身ですので(万が一にも倒れて)1階の方にご迷惑をおかけしないよう、近いうちに水槽台のBLAを1.2にする補強を行う予定ですが持ち家の方なら台の安定性としてはBLAが2.0以下なら十分かと思います。

      ※この場合、大阪地震クラスなら被害ゼロを目指したいですが、阪神大震災クラスが来た場合は諦めるという設定です。

      結局水がこぼれる&中身が出てしまうという被害も考える必要があるので、台が絶対に倒れないという事だけに執着するのではなく、ある程度の条件までは十分に耐えるという事で台の問題は決着させました。

      補足として書いておきますと
      実際に揺れを体験して水の挙動を見て気が付いたのですが
      スロッシング効果により意外にも水槽台は倒れない事が分かりました。
      同じ重さの岩が載ってる場合と比べると水のほうが倒れにくいという事です。

      この事から
      BLAが3以上とかは論外ですが2以下ならまあまあの地震に耐えると思います。
      ですので僕のように少し余計に対応しておきたい場合でも、1とまでいかずとも1.5くらいあれば台に関しては十分にOKと考えています。

      あとは中身をどのようにして守るか?
      具体的には水をどうやって外に出さないようにするかですが
      これはパーツさえ入手できれば記事にできると思い探していますが見つからないので力業で既存のものを加工して自分で作ろうかと思っています。
      こちらは大昔にSNSをやってた時に嫌という程やりましたので確認実験をしてプロトタイプを作ってみたいと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です