重金属問題
金魚に特に有害なのは非鉄金属と呼ばれる種類ですが、その中でも銅や鉛は特に怖いと言われます。
実は僕たち日本人は鉛に対してあまり恐怖心を植え付けられる教育を受けていません。 アメリカの人は鉛=危険という教育を受けているようで、大学院の時に鉛を取り扱う際、わざわざ分厚い手袋をつけて触っていました。 僕が素手で触ると大声で注意されて驚きましたが、僕なんかの世代は、子供の頃に釣りに行けば重りといえば鉛で出来ていたのでそれを歯で噛んで釣り糸に固定したりしてましたが、現在も健康的に生きている事から「別に大丈夫」と思っていますが、アメリカでは素手で触る事すら危ないと子供に教えているので歯で噛んでるのを見られたら何を言われるか分かりませんw
冗談はさておき
金魚に対しては本当に毒なので銅や鉛は容認できません。
特に銅が持つ毒性は雑菌を殺すレベルなので人間にとって「抗菌作用」が期待できる為に調理器具や配管などに古くから使われてきました。 ですので気をつけないと僕たちの生活の中には意外にもこの作用を利用した製品が多く存在していますので知らずに金魚に使用すると怖い事もあります。「抗菌コーティング」なんて書かれているものは金魚には使わないのが良いです。
金魚に関する許容量のデータがあまりないのですが
幾つかを比較して金魚にとって安全と判断できるのは
金魚に問題が出ない鉛の含有量 | 0.1mg/L以下(※1) |
金魚に問題が出ない銅の含有量 | 0.1mg/L以下(実験公表値) |
※1
鉛も0.1mg/Lであればほぼ安全圏の様ですが、水質で大きく変わる様です。
金魚の致死量としては10mg/Lで1-2時間で死亡ですが、
例えばカルシウムがある程度存在するとLC50が10倍以上の濃度まで引き上げられるという実験結果もありました。特に急性中毒に関して言えば水の硬度で大きく変わると言えるようです。
ここで気になるのが水道法の基準です。
水道水は全てこの基準値以下で処理されて僕たちの家まで届きますので、基準値が低ければまずは安心できます。
鉛及びその化合物 | 鉛の量に関して、0.01mg/L以下 |
銅及びその化合物 | 銅の量に関して、1.0mg/L以下 |
残念ながら、水道法の基準ギリギリの水道水の場合、人間には問題が出ませんが銅の含有量は明らかに金魚に問題が出る事になります。
こうなると自分の地域の水はどうか?
具体的に調べるしかありません。
ここでまず
皆様のお住いの地域の水道局のホームページを検索して
水質検査結果をご確認ください。
検索ワードは
京都市 水道水の水質検査結果
みたいにお住いの市の後に 水道水の水質検査結果 と打ち込んで検索すれば多分出ます。出ない方は試行錯誤してください。
そうやって探し出すとPDF形式で検査結果が公開されてますので細かく確認できます。
例えば 僕が住んでいる
(木津川市)
昔事務所があった
(京都市)
現在仕事で水質関係を調べている
(大阪市)
こんな感じで、水道水にそれぞれがどの程度の濃度で含まれるのか毎月~3か月周期くらいで調べて公表してくださっていますので、こうした公開情報は有効に活用させていただきましょう。
これを見る限りでは、大阪のこの地域の銅の数値が金魚飼育にはギリギリかなと言う数値ですが、それ以外はご覧の様に余裕と思える低さです。
僕の住んでいる地域は、(水道法の数値よりも)かなり余裕のある良い品質で供給されていて安心しました。 エビとか飼うには厳しい数値もあるようですが金魚なら余裕です!
残念ながら確認後、数値が高い地域にお住いの場合は重金属の無力化を考えたほうが良いので、水道水をカルキ抜きする薬で重金属の無力化もできるものを選ぶほうが良いと思います。
※この例では1か月分だけを見ていますがお調べの際は過去の履歴もご確認の上、どの程度の変移か?最高でどのくらいまで出ていたか?などもご確認ください。
更に水道水は異常が無いけど配管類が古いとか問題がある場合も念のため重金属の無力化が可能な薬を使うほうが安心です。以下のような場合は薬の使用をご検討ください。
- 市が行っている水質検査結果が高めの方
- 配管が古い建物にお住いの方
- 金魚が突然死を繰り返す方
- 良く分からないけど不安を1つでも減らしたい方
クロラミン問題
水道水をカルキ抜きして金魚飼育に利用する場合のもう一つの問題はクロラミンです。
塩素にアンモニアが反応するとクロラミンというものが出来ます。
魚には非常に有害な物質とされています。
更に、ここで重要なのは、クロラミンは、太陽光に晒してもエアレーションしても消失しないという事。強力なフィルターで取り除くか、薬で無害化するかしないと言われています。(特にメーカーさんがw)
が、本当に危険でしょうか?
前回の記事で書いた塩水のオーダーのように
0.03%と0.3%と3%では危険度が大きく違います。
つまり
どのくらいの濃度で水道水にクロラミンが存在するか?
金魚がどれくらい濃度まで耐えるのか?
が分からないと判断できません。
今回も1つ1つ見てから判断しようと調べました。未だあまりデータが無いので途中ですが、ここまでに分かった事を少し書かせていただきます。
この枠内はソースが不明な未確認情報も含みます。
水道水中の含有量
例えば、日本の水道水に含まれる残留塩素が0.9mg/Lの時のクロラミンが0.05mg/Lという公表データがあります。 この数値は1つのデータなので浄水場により0.05が多少上下すると考えられますが5でもなく0.5でもなく0.05というオーダーと分かる事でどのくらい含まれるのかを検討できます。
金魚の耐性レベル
また別の話ですがクロラミンを殺菌剤として使って金魚の病気を治療する論文では最初に金魚がどのくらいの濃度まで耐えるか検証しています。
その結果では24時間でのLC50が約24mg/Lであり、それ以下の濃度で治療を行った結果未処理の例に比べて劇的に生存率が上がったと書かれています。 検証例では12mg/Lものクロラミンが入っている中の金魚が死ぬどころか病原菌を殺してもらえたことで生還したという結果が出ているのです。
結果判断
よって長期的には無理でも短期的には12㎎/L程度は耐えられると分かりますので 水道水に含まれる0.05mg/Lが即金魚を殺す濃度とは考えにくいという結論に達しました。
だから現時点で得られたデータからは「クロラミンが水道水に存在する」が即、金魚の生命を危険にするとも言えないと判断しています。
※しかしこの事だけからでは、だから長期的に安心とは言えません
※参考データ数が少ないので今後機会があるごとに別のデータを探して比較しながら内容を補正する予定です。
最初から含まれるものよりも後で合成されるほうが怖い
水道水に含まれると書きましたが日本では浄水処理にクロラミン法は使われていないので、海外の様に大量に含まれているわけではなく、水道水にクロラミンが含まれる主な原因は水道水に微量に含まれるアンモニアや、マイクローブの排せつ物や死骸が出すアンモニアと塩素が化合した結果のようです。
なので日本の場合は
事件は水槽の中で起きている?!
クロラミンは塩素がアンモニアと反応してできるので、塩素の注入前に適切な処理を行っている水道水よりも、水槽の中のほうが多くのクロラミンが発生する可能性があります。
当然この反応が水槽内で起きるにはアンモニアだけではなく塩素が必要です。
つまり、水槽に塩素を入れなければ何の問題も無いわけです。
逆に言えば、水道水のカルキ抜きが中途半端だと水槽内のアンモニアと反応してクロラミンが作られてしまうという事です。
アンモニアの量からもこちらのほうが遥かに高濃度になるので注意が必要と思います。
これを予防するためにも
水道水の塩素は完全に抜いてから水槽に使う事が重要です。
この点では金魚部でも何度も書いてきましたが、僕は昔から神経質なほど塩素は確実に抜いてきたので特に問題は出ていません。
エアレーション2日以内で使う時は塩素の検査を行いますし、時間の余裕があれば通常は3日ほどエアレーションしてきました。
緊急時の塩水浴などはハイポでカルキ抜きしています。
過去の経験を振り返って
僕は長い間エアレーションだけでカルキ抜きして飼育してますが上記のように確実に抜くようにしてきたので金魚は特に問題なく生きています。 よって現時点では薬を使う事や浄水器を使う事は考えていませんが、微量は水道水に存在する訳ですので、今後クロラミンを完全除去したほうが良いと判断する新事実があればその時は躊躇なく別の方法に切り替えようと思っています。
まとめ
これらの事から、僕は現時点では(急に塩水浴する時を除き)カルキ抜き剤は使わずエアレーションでカルキ抜きして金魚を飼育しています。
しかし、これは僕の環境での僕の判断ですので、
皆様は「重金属の事」「クロラミンの事」をよくご検討の上ご判断ください。
良く分からないという方はとりあえず重金属の無力化が出来るカルキ抜き剤をお選びください。
コストはかかりますが最も安全側の判断となります。 勿論、少し観賞魚業界のマーケティングにのせられている印象はありますが、不安を抱えて飼育したり、金魚を死なせるよりは良いと思います。
またクロラミンは殆どのカルキ抜き剤で無力化できますが、重金属の無力化は低機能製品ではできません。
松・竹・梅とあるなら松クラスの製品でないとダメです。(詳しくは次回記事にて)
この記事はカルキ抜きの記事が長くなりすぎた結果スピンオフさせたものです。
カルキ抜きに関しては次回の記事で詳しくご説明しますのでそちらを併せてお読みください。
こんにちは。
いつもブログを参考にさせてもらってます。
いつもカルキについては気にしていても他は重要視していませんでした。人間にとって良い水でも魚に取っては同じではないと改めて認識しました。
市のホームページで水道水の水質検査結果を見ましたが、公開されている項目数が少なく次のページも見ました。
http://www.jwwa.or.jp/mizu/
こちらの地元の水は「<0.01」や 「<0.001」と検査結果、測定できないくらい少ないようでした。
安心しました。
ここのページには全国のデータがあります。
市のホームページで水質検査結果が見当たらなくて困っている方は、ここを見るといいかもしれません。
Demekinさん こんばんは。
コメントありがとうございます。
リンクありがとうございます。
記事では説明不足だったかもしれませんが、
幾つか気をつけていただきたい点がございますので補足させていただきます。
浄水場の水質データと言うのは必ずしもお住いの場所のデータと同じではないのでこの数値が良くても安心できない事があります。
大きな市になればなるほど調査個所を細かく設定しているのも検査する場所で数値が違ってくるからだそうです。
日本の場合は地下水ではなく川や湖を水源としている事やインフラの新旧が場所で変わる事により、数値が変動しがちなのでお住いの市のデータで最新のものを確認いただく事が重要になります。
ただしこれは都会の市役所の見解であり、自然が豊かな地域では街中の観測点での水質調査は行わず浄水場と河川のみの調査としている事もあるようです。
調べてみると見解はバラバラなのでお住いの地域のそれに合わせるしかありません。
リンク先は2年前のデータで更新が止まっていますが、あまり古いデータを参考にするのは少し怖いので市が提供している最新のデータをご覧になる事をお勧めします。
その為に、お役に立つか分かりませんが
<以下、追加情報です>
ネットに公開されている項目数が少ない場合は管轄の水道局に問い合わせてみたり、訪庁して検査データを閲覧させてもらうしかないですが、その前に確認してみていただきたい事があります。
厚生労働省が指定している水質基準項目と基準値(51項目)は毎月では無くても定期的に調査する事になっていますのでデータが無いという事はありません。
というのも基準値が決められていて、これらが基準値以下であることを確認する義務が水道局に課せられているからです。
水道法施行規則第15条第1項には少なくとも3か月に1回は51項目の検査が義務づけられています。
だからどこの市であれ日本国内であれば51項目の検査データが3か月ごとに存在するはずです。(少なくとも浄水場や河川のデータはあるようですし、人が多く住む都会では実際の街中に観測点があり最寄りの観測点のデータを参照することも出来ます)
ただし僕がこれまでに調べた中では
何故かは分かりませんが公開データは6か月に1回だけ公開としている市があります。
この場合、6カ月に1回だけ全項目を公開し、それ以外は基本項目のみ公開と決めているようなので、お住いの市のPDFを少なくとも6カ月分連続で1枚1枚開いてみてください。 そうするとその中に詳しいデータがあるPDFが1枚だけ出てくることもあります。
今一度、お住いの市のデータPDFをこの方法でご確認ください。
これで出ない場合は訪庁するか問い合わせるしかないです。
説明不足でお手数をお掛けして申し訳ございません。
PS
またこの記事では僕個人が気になっていた銅や鉛に関してのみ着眼してますが、それ以外の項目も突出したものが無いか見ておくほうが安心です。
こんにちは。
もう一度、市のホームページを見たところ「全項目水質検査」というタイトルで全項目が載っているPDFを見つけることが出来ました。
ありがとうございました。
Demekinさん こんにちは。
お返事ありがとうございます。
それは良かったです。
最新の情報で確認できると安心ですよね。
>「全項目水質検査」
このパターンは未経験でした。
市によっていろいろな公開方法があるようですので他にもいろんなパターンがあるんでしょうね。
日本には市だけでも700近くあるようなのでそれ以外の区分に属するエリアまで含めば凄い数のバリエーションがあるのかもしれません。
記事を書くときには想像もしてなかった盲点でした。