青文魚って普通に飼育しているときやお店で見るときは上の写真のような色ではないでしょうか?
多くの方々にとって「真っ黒の金魚」というイメージは無いのではないかと思います。
実は青文魚は保護色の働き方が独特で
明るい水槽で飼育していると銀色になり、
暗いコンテナなどで飼育していると全身真っ黒になり、
それを明るい場所に出すと徐々に黒が消えてまた銀色になります。
つまり黒オランダ等はエピデルミス層のメラニンが開いた状態で固定されますが、
青文魚は開いたり閉じたりする状態が維持されるためこのような違いが出るようです。
よって環境により1匹で銀と黒(明と暗)の2つのスタイルを楽しめる金魚ともいえます。
実はこの開く閉じるという表現が明記されていないものが多く、リサーチの序盤で「瞬間的にメラニンが増えたり減ったりするなんて不可能だろう」と思っていろいろ読んでいましたが、調べるうちに全く別の文献(多分魚の保護色に関するもの)でメラニンが開いたり閉じたりできると知ってようやく納得できました。
※この辺の話になると金魚に関する文献では全てはカバーできないので魚全般でリサーチしました。
エピデルミス層に関する説明や色の仕組みに関しては別の記事をご覧ください。
明
まずは、明るい場所で飼育している時の色ですが銀にところどころメラニンが残るのでまるで水墨画や日本画のような軽くて繊細なトーンで覆われます。
普通の銀では決して表現できない陰影を、微量に点在するメラニンのツブツブが作っているのです。
これにより下の写真のような何とも言えない趣のある表情が出ます。
暗
逆に暗い場所で飼育しているときや明るい場所に移動した直後はエピデルミス層のメラニンが開いているので全身が真っ黒ですが、黒オランダのような墨色の黒ではなく下に銀色が透けて見える黒なので黒いレース編みのような非常に繊細な美しさがあります。 また明の時に比べるとコントラストが強くなるのでより力強い印象になります。 特に白と黒が織りなすコントラストがウロコの部分では非常にシャープで力強いのに対して、尾びれでは対照的に柔らかく軽やかに見えるので見ていて飽きない魅力があります。
泳ぐアート
このように青文魚は、単色ほどの定常的なトーンではなく、チャリコのように煩くもなく、程よく心地よいグラデーションが作り出す動きのあるトーンがあります。 写真では止まっていますが、実際にはこれが水中で泳ぎ続けますので鑑賞しているだけで美術館に居るような贅沢な時間を過ごすことが出来ます。
明でも暗でもその間でもバランスは違えど簡単すぎず複雑すぎない程よいトーンが非常に絵になる金魚です。
特に下の写真のように顔や尾に地の色(この場合、黄土色)が薄く入る事で適度なアクセントとなっている点がブガッティーの初代バイロンのようなカラーリングでとても好きです。
でも・・・夢は何時か覚めるもの
残念ながら撮影回数5回程度で1匹が ”病気” になりました。
※ただしこれを”病気”と呼ぶかどうかは賛否あるようです。
見た目は元気で 良く泳ぎ・良く食べ・良く糞をする のですが、表層のメラニンによる黒色が徐々に無くなり、それにつれてウロコの下のメラニンまで無くなってしまう事が起きました。
「あれ?黒がはげてきたかな・・・」と思いながら見てましたが、「元気だからまあいいか」と思って放置していると、次々に同じプラ舟内の別の青文魚もはげてきて、結果的には4匹中3匹が合流直後にはげてしまいました。まだ当歳魚としての前半と思われるタイミングでほぼ同時にはげてきたことになります。 ちなみに普通種が2匹&別種1&別種1の計4匹(3種類)で2か所の金魚屋さんから購入して、保護観察期間(※1)は購入店別に分けて飼育し、その後合流させて間もなく4匹中3匹がはげたという流れです。 あまりにもメラニン消失時期が早い事、これがほぼ同時に3匹に起きた事から、偶然とか個体差とかではなく、環境要因の何かによりスイッチが入ってしまったのだと考え当時色々調べました。
※1 僕は新しく購入した金魚は3か月間他の金魚と合流させない保護観察期間というものを設けています。
もともと青文魚は年齢と共に羽衣になり白鳳となる・・・つまり何時かはメラニンが全て無くなる運命にあるとされています。
同じようにメラニンがいずれ無くなるとされている黒オランダや黒出目金同様に、メラニンが抜けるきっかけ(イニシエーション)が起きて、高齢や病気でそれを止める事が出来ない場合、促進過程(プロモーション)に入り徐々に大半のメラニンが消えてしまうようです。若いと抵抗する物質が出来るのでこのプロモーションに入ることなくプロセスはキャンセルされます。つまりメラニンを持つ種類の金魚のメラニンは若いほど維持されやすく、高齢になる程飛びやすいという傾向があると言えます。 メラニン消失の多くはバクテリアやウィルスによりイニシエーションが起きるというメカニズムのようで、色が抜けるのがバクテリアやウィルスに侵されて起きる事ならば「病気で」という表現になると思うのですが、他にもいくつかの環境要因があり、これらのどれかがあるとイニシエーションが起きるようです。しかし若くて健康な金魚の場合、多くは(前述のように)イニシエーションが起きたとしてもプロモーションに入ることなくキャンセルされ黒が維持される流れとなります。
一方で、この問題は色が抜けるだけであり 良く泳ぎ・良く食べ・良く糞をする の3原則は現在も全く問題なく維持されている為、健康体である事に変わりないので、そういう意味では「病気ではない」という表現が正しい・・・とも思ったりします。 結局日本語でどう表現すべきかは定かではありませんが、黒いのが好きで選んだ飼い主としては好ましくない変化であることには間違いありません。
という事が起きて現在では撮影対象は1匹だけになってしまいましたので今回の記事の写真の殆どは約1年前の在庫を無理やり使用しています。本当は撮り直したいのですが、もう黒くないのでできません(涙
現時点でこのプロセスは不可逆らしく一度はげると元に戻らないそうですが、誰か研究者さんがメラニンを元に戻す薬を開発してくれないかなぁと思ったりします。オイルマネーさえあれば・・・
結局、他の3匹はデビュー間もなく喫煙がバレて解散したアイドルグループ的な感じでプラ舟でやさぐれております。 何時でも撮影できるように黒い状態を維持しようと水槽ではなく黒いプラ舟まで購入して迎えたのに・・・。
一番の心残りはこの写真の1匹です。現在は東錦モドキなカラーリングになってしまい撮影対象から外していますが来たときは写真のように暗い所で泳がせておくと綺麗な黒に覆われて、体形もボムシェルで上見でも横見でも絵になる青文魚なので沢山撮影しようと思っていましたが、結局殆ど撮影できませんでした。
とは言え、4匹とも仲良しで今日も元気に泳いでいます。今となっては黒いプラ舟の中、正常な色を維持してくれている1匹だけが常に何処に居るのか分からなくて毎回ヒヤヒヤしながら安否確認しています。 4匹とも忍者のような時は気になりませんでしたが3匹がド派手に目立つようになってから急に”見えない”1匹を気にするようになりました。
またいずれ産卵でもすれば真っ黒の仔が飼育できるでしょうからその日が来たら飼育してみます。
今年は黒オランダの産卵スイッチを入れる為に室内温度を急に落とした時につられて追尾してましたが今年は黒オランダで手一杯なので放置しました。黒いプラ舟内なので水を抜かないと確認できない為確認はしてませんが、まだ若いですし数もそんなに多くなかったのではないかと思います。
金魚部さん、こんばんは。
うぅぅ…感動です(感涙)
尾びれの付け根のウロコが見える。
メラニンのつぶつぶがヒレにもいっぱい。
こんな写真は初めてです。うぅぅ…(再び感涙)
肉眼ではわからない細部がこんなにきれいに。
参考になります。きれいですねえ。
うちのベランダの青文は天気によって色が違います。
なるほど…メラニンおそるべし。
稚魚も黒い容器から透明の容器に移すと色が変わりますね。
うちには満2歳になる金魚の中で
1匹だけ稚魚の色のままの子がいます。
元気いっぱいの男子で、追星出して女子を追います。
でもフナ色…。
金魚は謎がいっぱいで、そこが魅力です。
金魚部さんがひとつずつ謎を解いてくれるので
いろいろなことがわかって、ますます金魚が好きになります。
ほかでは見られない金魚写真をこれからも楽しみにしています。
マリリンさん こんばんは。
コメントありがとうございます。
写真は在庫から選びました。
本当はもっとたくさん撮りたかったですがモデルさんNGで仕方なく撮影中止です。
ハリウッドでは良くあることですw
でもまたいつか黒青い子が産まれたら撮影を再開したいです。
もともと金魚の色に関して調べていた時にBlue Orandaという真っ黒の金魚の写真を見つけて「日本の青文魚とえらく違うイメージだな」と思ったのがきっかけでした。
黒くなったところを撮影してみると独特の雰囲気ですっかり惚れ込んでしまい、丁度カレンダーを作っていた時でしたので無理やり表紙に青文魚の写真を使いました。
飼育されている方からすると青文魚が黒くなるのは周知の事実だったんでしょうけど、いつも明るい水槽にディスプレーされているお店の青文魚しか知らなかった僕には衝撃でした。
>うちには満2歳になる金魚の中で
>1匹だけ稚魚の色のままの子がいます。
という事は他の青文魚は結構早く黒が飛んだという事でしょうか?
普通はどれくらい黒が維持できるのかも知りたいのですが、その辺の情報は全く見つかりませんでした。
色剥げしたものに(羽衣や白鳳とか)たいそうな名前がついている事からも黒オランダよりは早く、かつ一般的に(当たり前のように)色が飛ぶのだろうか?とかも気になっています。
金魚部さん、こんばんは。
わかりづらい文章ですみません。
満2歳のフナ色の金魚は青文魚ではありません。
雑種です。
2年前の今頃、水槽掃除のため、コンテナに金魚をまとめました。
もめてる様子もなかったので、一晩放置したら、
翌朝、卵がドバっと!
コンテナにまとめたのは
素赤オランダ2匹
黒デメキン1匹
青文魚1匹
キャリコ琉金1匹
青水だったので、卵が孵化したあとも、ほったらかしでした。
1か月して、わちゃわちゃしてる稚魚を減らすことにしました。
そして現在、11匹です。
2~3匹にするつもりだったんですが、
親金魚にひと口で食べてもらう時期を逃してしまいました。
11匹の体型は無視して、色分けすると
素赤7匹
オレンジと黒のトラ模様(虎禿げではありません)1匹
サクラ?(グアニン微量の赤・白・オレンジ)1匹
肌色(グアニン微量、黒点がありますが白化進行中)
フナ色1匹(普通にグアニンあり)
素赤はわかるんですけど、その他4匹が謎。
キャリコの色が誰かの色と混ざったんでしょうねえ。
俗に言う透明鱗の稚魚って、透き通ってますよね。
普通鱗の稚魚はフナ色から虎禿げになって赤くなる。
透明鱗の稚魚はフナ色にならずに色がついていきます。
フナ色のままのあの子は、誰の子?
だらだらとすみません。
金魚部さんの金魚の色についてのお話がとても興味深かったので。
残念ながら、このときの青文魚は死んでしまって
今うちにいるのは、そのあと買った子です。、
コンテナのような半透明の衣装ケースに住んでいるからか
上見では黒、光の入り方で薄くなります。
横見では…おなかが金銀きらきらだったり、黒っぽかったり、
体を翻したときにきれいだなあって思います。
日本画の岩絵具にはたくさんの色があって
色を塗り重ねて仕上げていきます。
私は未熟ですが、ウロコもヒレもバシッと見せていただいたので
制作意欲が湧きました!ありがとうございました。
金魚部さんの青文魚が黒を持続できますように。
金魚部さんにオイルマネーが転がり込みますように。
祈ってます。
マリリンさん おはようございます。
返信ありがとうございました。
なるほど、産まれたのは青文魚ではないんですね。
それにしても4匹の色が興味深いですね。
グアニンが普通に含まれる金魚は大きなサイズでこそ本来の美しさが際立つと思います。
特にフナ色なんかは小さいとただのフナ色でしょうけど、大きくなると光の当たり方でグラデーションが美しいかもしれませんね。
グアニンがあると周りの環境の色も反射するので撮影の設定次第では、かなり美しい写真が撮れると思います。
>日本画の岩絵具にはたくさんの色があって
>色を塗り重ねて仕上げていきます。
油絵が重ねるイメージでしたが日本画もなんですね。
なんとなく日本画は淡いイメージがあったのですが岩絵具で画像検索したら
現代的な作風の方々も多く表現の幅も想像していたより広くて驚きました。
お気に入りの金魚作品が出来たら是非拝見させてください。
オイルマネーが何処からともなく転がり込んできたら
転覆病撲滅に向けてsalk instituteみたいな研究所(設計&デザインby俺)を作って
アメリカ、イギリス、中国、タイ、マレーシアから研究者の方々を呼んで
休憩室にはでっかいエスプレッソマシンを置いて
ポテチとチョコレートは食べ放題にして
何故か併設されている有機農園ではラズベリーやブラックベリーを栽培して
あと、社会貢献として夏休みは「ちびっこ金魚相談コーナー」とかも研究員さんに交代でやってもらいます。
最終的にはエラを肺に変えて、ヒレをハネに変えて空気中でも生きられる金魚をつくって
お買い物とかお散歩に金魚を連れていける時代が来たら
もう思い残すことはありません。
ですのでまずは
求む!オイルマネー
金魚の産卵スイッチは水温ですが
金魚部さんのお子様スイッチはオイルマネーですね(笑)
そうです。
ノーオイルマネーノー金魚フューチャーです。
ちなみに
記事に書くの忘れてましたが(←オイオイ)
産卵やる気スイッチは
◆水温の変化
◆気圧の変化
は科学的に立証されていますが
◇新水刺激
に関しては科学的根拠がないようです。
個人的には新水刺激を最も信仰していたというか効果があるように思っていたのですが、あえて言うなら
◆環境の急変
というのに該当するかも・・・くらいで、水が新しくなるという点に言及しているものは見つけられませんでした。
本当に金魚飼育に関しては謎が多くて、1つ解いてもまた次の謎がどんどん出てきてキリがないので早くオイルマネーを手に入れて研究所をつくらねばと思っています。