修繕コンサルタントのお仕事を通じて思う事

ブログを始めるきっかけ

一級建築士としてマンションの大規模修繕のお仕事を通じて感じた問題点や是非知っておいていただきたい知識などをより多くの皆様にお伝えしようと思いブログを書くことにいたしました。
大規模修繕コンサルタントをしていて思うのは、あまりにも多くの情報をあまりにも短い期間でご理解いただかなくてはいけないので1年程度の準備期間の中だけでの説明では無理があると感じております。 まず大前提として修繕方法には多種多様な選択肢がございます。高価な方法、安価な方法、時間のかかる方法、生活の一部を一時的にストップしていただかなくてはいけない方法、施工者の技術が要求される方法など。 その中から個々のマンションに合う最適な選択肢をお選びいただく為には更により多くの情報から多角的にご判断いただく事が大切だと強く感じております。 最終的には1つの道をお選びいただきその完成に向けて皆で力を合わせて行うのが大規模修繕ですが、分譲マンションの場合はオーナー様が1人ではなく、また管理組合は1つの指揮系統下にある1企業でもないため、何十人、何百人のオーナー様の多種多様なお考えがある中で1つに決めなくてはいけなくて、その点でも簡単ではございませんので本ブログを通じて少しでも多くの皆様に資産をより良い状態で運用いただけるように事前に情報を公開して参りたいと思っております。

例えば壁を修繕する場合

方法論の選択肢

詳細は今後1つ1つ記事に具体例などをまとめてお伝えする予定ですが本日はまず簡単な例として壁を修繕する場合でご説明します。

◆現状品質維持で同じ材料で修繕する
という選択肢のほかにも
マンションによっては
◆別の素材に切り替える
ほうが安価でより綺麗に仕上がる場合もございますし、
また別の方法として、
◆更にお金をかけてより耐久性が高い材料を選ぶ
ことで修繕周期を延ばすことが可能になり長い目で見た場合に安価になるケースもございます。 
多くの場合どれも可能な選択肢ではありますが
この中のどれが最も良いかは、そのマンションにお住いの方々のお考えや修繕積費立金額など現状の物理的状態や技術面以外の条件も十分に加味したうえで決めていくことになります。 (※もちろん危険を伴うほどの損傷がある場合はその限りではありません)これを修繕委員会や理事会で1時間程度の説明をしただけでは全ての選択肢のメリットやデメリットをもれなくご検討いただく事ができないため後に問題となる事もございます。

優先事項や範囲

更に、直す範囲もひび割れの部分だけを直す場合と全面的に下地からやり直す場合とでコストに大きな差が出ますが、これもマンションの資産価値の維持を優先する場合と維持管理費の低さ(やコストパフォーマンスなど)を優先する場合とで選択が分かれます。
こうした事は皆様の個別の条件や検討内容により判断が変化することもございますので前者を選ばれる時もあれば後者を選ばれる時もあるだろうと思います。 大切なのはこうした1つ1つの事例をご理解いただき普段から何かある度に考えるという習慣を持っていただく事です。 私共から1時間程度の説明を受けた後にその場で5分で判断する場合と、何年もの間生活を通じてその都度条件や立場が変わりながら考えてきた結果によって判断する場合とでは子供と大人程の判断力の差になりますので本ブログでは可能な限り具体例を出しながら皆様ならどうされるか普段から考えていただきたいと思っております。

修繕部位ごとの違い

更に細かな条件まで掘り下げますと
方法論以外に同じ壁と言っても
〇目立つ壁(正面など)・目立たない壁(建物と建物の間など)
〇汚れやすい壁・汚れにくい壁
〇大きな壁・小さな壁
〇ひび割れが出やすい壁・出にくい壁
〇日光や雨が常に当たる壁・殆ど当たらない壁
〇タイルの壁・塗装の壁・パネルの壁
など
1つのマンション内でも条件が変わりますし、マンションが変わればまた全く別の事が問題となる事もありますので全ての例で1つの答えという訳にはいきません。特により良い結果を出しながらコストを少しでも抑える場合は如何に細かく設定するかも重要になることがございます。

総合的な判断の重要性

このように
「壁をどのように修繕するべきか?」
という1つの議題だけでも
多種多様な方法論や判断材料が存在しますが、実際はそこまで細やかな対応はされていない事が多いようです。
これには意思決定を簡略化する仕組みが関係しておりますが、その良否に関してはその記事で詳しくお伝えしたいと思います。

極端に言えば、
◆問答無用で全てを新しくする

◆予算不足からひび割れだけを補修する
みたいな大雑把な選択肢で判断されている事が多くなるのが現実です。
これも日本経済が右肩上がりの時代なら許容されてきたことですが、これから先は予算に余裕がある組合様でも長期的に計画を見直せばもはや大雑把な工事設定とか「ついでだから・・・」みたいに不要な工事まで組み込んだ無駄の多い修繕は避けたほうが良いと考えております。

最後に

このような感じで毎回トピックごとに考えていただきたいことや知っておいて頂きたい事を書かせていただこうと考えております。 マンションに関する問題は今後より多く報道されることになると思いますが「備えあれば憂いなし」の言葉通り計画的に問題1つ1つに対して対応策を講じていただければより長く安心して大切な資産としてマンションを運用いただけると思います。 本ブログでは大規模修繕を中心にその周辺情報を含みながら進めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。