【マンション長期運用への障害】 その3 核家族化と高齢化


ここまでの記事で修繕の資金面での問題のお話を書かせていただきましたが今回もその流れで別の要因に関してです。
住民の方々と個別にお話をさせていただく中で問題と感じたのが「核家族化」と「高齢化」です。長期運用を視野に入れておられるマンションの場合は特に資金不足の原因を作り出す要因となります。

核家族化

まず核家族化問題というのは今現在のご家族に関してではなく、将来お子様が大きくなられた時に出ていかれるという事が問題になります。つまり子供さんが結婚後実家(マンション)を出て新たに別の新居に分かれて住まわれるという流れになると現在のマンションを受け継ぐ人が居なくなります。 結果としてご両親が亡くなると独立した子供さんは独立後に購入した新居と両親のマンション両方の管理費や修繕積立金を2重に支払うという負担が出て、支払い不能になり相続したマンションの管理費や修繕積立金を滞納されてしまう問題。(更にその前には相続税の問題もあり、相続放棄されることも。)マンションを60年や80年で運用していく場合、1世代では完結しないのでそれを引き継ぐ方が必要になりますが、核家族が当たり前の現代日本ではこの前提が崩れやすいと言えますので、この件に関して対策を講じて頂かないと将来的に修繕資金の減少の原因の1つとなります。

高齢化

また高齢化というのはマンションに残られるご両親もそうですし、お子様の居られないご夫婦や単身者の住民の方々も含め残っている方々が皆、建物と共に高齢化していき人生の後半に該当する築40年以降に大きな金額の一時金が必要になっても収入が無く支払えない問題。そしてお亡くなりになるとお部屋が空室になる問題(特別縁故者への譲渡や財産の国庫への返納等の問題)。 これも修繕資金が減少する原因になりますので対策を規定するなどしないと、これが時と共に大きくなりすぎますと修繕積立金が計画よりも大きく不足することにより修繕自体が実施不能になってしまいます。 長期修繕計画書は基本的に全戸が決められた修繕積立金を(滞納することなく)納めていただけるという前提で作成しますので滞納や支払者不在の問題が大きくなりますと計画が崩れてしまいます。

更なる問題

また若い子育て世帯と高齢者世帯が同じ新築マンションを購入し「終の棲家」とする場合、マンションの想定寿命が違う事により長期修繕計画書を見直すときや修繕費の改定(値上げ)の際に意見の対立が起きやすくなります。
若い子育て世帯は長期的に運営することを望まれますが、高齢者世帯は短期運営で十分というお考えの方が多く、これまでも「30年も先の事言われても、私は生きてませんよ」と冗談を言われる方もおられました。現実問題として高齢者世帯の方の立場になって考えれば多分自分には関係無いであろう30年先や40年先の為に大金を払うのは何得できないという事になるのも十分に理解できます。そして現在は若い子育て世帯の方々もマンションの寿命の後半には高齢者世帯の立場になりますのでその時の世帯バランスによっては立場が逆転し困ったことになるかもしれないのです。 

理想を言えばマンション販売時に
長期修繕計画書が専門家により十分に余裕を持った計画で作られ
マンションの想定寿命が明記され
その内容を確認し納得した方だけがマンションを購入できる仕組み
になっていれば良いのに・・・と思います。
例えば30年という想定寿命で修繕も最小限で組んで安い生活費を実現できるプランのマンションがあったり、逆に想定寿命を80年として必要な長期計画と共にそれ専用の(想定外の工事費の不足を補う)特約付きの保険まで備えたマンションなど多様なプランでマンションが販売されれば購入者はご自身の人生設計に合ったマンションを選ぶことができ、現在のような問題は起きないと思うのですが、マンションは原則として売り手市場で発展してきましたので購入者の方々には不利な条件設定のものが多いのが現状です。
特に現在のマンションは所得や年齢の幅だけでなく、そのマンションを必要とする想定寿命までバラバラの方々が1つ屋根の下に集合して住んでおられますので、1回目の修繕くらいは何とか意見がまとまったとしても2回目3回目で各オーナー様の思惑が大きく違ってくる為問題が出やすいのだと思います。

対応策

対応策策定や規約等の整備

滞納問題やその他の管理組合の収入の減少問題の1つ1つは日常的に起きる小さな問題として現れてきます。 これらの問題に一律で対応できるように規約を整備したり、最初から1件たりとも放置することなくその都度確実な対応を実施されていれば大きくは問題化させずに済みますが「誰かが何とかするだろう」とお考えのまま放置されたり、「責任取りたくないので来年の理事会に任せよう」と先送りしたりされますと先送りリレーが開催され、最悪の場合は、かなり大きな金額になってから問題の大きさを実感することになってしまいます。

長期修繕計画書の定期的な見直し

更に計画というのは予測できるものだけを組んでいるものですので長期修繕計画などは専門家による精査や再計画は勿論、その後も修繕のたびに現状と計画に大きなズレが生じていないかなど見直しを繰り返すように実施して頂かないと徐々に現状とのズレや物価や相場とのズレなどが生じてしまい使えない計画になります。 計画の見直しは5年以内が良いとされますが長期修繕計画書の周期によっては6年とするのも良い場合がございます。

共同住宅というライフスタイルは多くの方々と協力し合うことで個人では出来ない事も実現できるという素晴らしい点がございますが、ひとたび意見の相違などの問題が起きた時に融通が利かず対応が遅れがちになりますので普段から問題が小さなうちに確実に処理される事が重要と思います。
私は建築以外にも多くの専門分野にまたがってお仕事をさせていただいており多種多様な契約を結びますが、その都度トラブルの際の対応に関して細かく話し合っておくようにしています。お客様には「晴れの時に雨の時の事を話し合いましょう」とお勧めしております。 というのも雨の時(トラブルが起きてから)だと感情的になったり冷静さを失ったりする方も出てこられますので、お互いが冷静に判断でき、相手を信頼できると判断している晴れの時にしっかり話し合い納得しておくとトラブルが起きたときに「敵対する」のではなく問題解決に向けて「協力し合う」関係になる事ができるからです。 ですのでどうか皆様も1つ1つの問題に関して先送りせず、是非小さなうちから話し合ってみて頂ければ幸いです。 そうして1つでも多く準備しておかれれば近い将来大きな違いが出てくる事と思います。

そして根本的な事や大きな方向性は最初に明確にし最後まで初志貫徹で守り通すことさえできればマンションというライフスタイルは非常に安心で心地よいものとなると思います。
逆に大きな方向性が維持できないマンションや変更が相次ぐマンションは多くの方々にとって先行き不安を感じたり人生設計が定まらない為トラブルが増えてしまいますのでご注意ください。