マンションの管理組合の理事になり運営をされていると図面がおかしいと気づいたり、設計事務所や工事業者から指摘されるという経験をされた方は多いのではないでしょうか? 図面が間違っていると大規模修繕などで大きな損害を出すことがございます。 特に見積もりが正しく算出できない問題は皆様の予算を直撃しますので竣工図書の現状との整合確認は重要です。
他の業界ではそれほど起きないのにマンション業界では、このような不手際がどうしてここまで頻発するのか? に関して書かせていただきます。
マンション購入直後の管理組合さんは瑕疵担保責任の範囲で販売主さんに竣工図書の修正を要求する事も可能な場合がございますので、この記事を読んで、ご自身のマンションも同じ問題があるかも?と思われたなら是非一度お調べください。
図面作成の流れ
最初にご理解いただきたいのが図面ができてから皆様の手元に竣工図書として届くまでの流れです。
まずはミスが何時起きるのかを分かりやすく解説します。
※ただしこれはマンション専門設計事務所の流れなので私達一般の設計事務所とは少し異なる流れになります。
基本設計 (ラフの図面)
一番最初にマンションの高さや面積などを検討して大まかな形を作ります。
この段階で法規チェックを済ませ、大まかなデザインを入れてみてから、
発注者(ここではデベロッパーと仮定します)に確認していただきます。
※ここは未完成の部分だらけなので本件には関係しません。
実施設計
発注者から了承が得られたら
今度は役所の許可をもらうため確認申請図面を作り申請を行います。
ここで初めて皆様が手にされている竣工図書と同じ形式が整います。
※一般的には、実施設計はこれとは別の図面を大量に作成することも含みますが効率化を追及してきたマンション専門の設計事務所では申請に不要な図面は最小限で対応する為、ほぼ 確認申請=実施設計となっている事が多いです。
現場工事前1 見積りによる変更
次に施工業者とデベロッパーの間で見積りのやり取りがあり予算に収まるまで調整作業が行われます。
予算オーバーが大きいと設計をやり直すこともありますが、通常は素材のグレードを落として予算を確保するなどして対応します。
ここで発生する相違点を ※変更1 とします。
現場工事前2 施工図等による変更
マンションの現場では上記の実施設計の図面を基にして施工者が独自に施工図という図面を作ります。これは原則として一般には公開されません。この施工図を作る段階で矛盾が見つかると細かな納まりや配置計画に変更要請が出ることがあります。最近ではVE(バリューエンジニアリング)なども盛んに行われますのでVE関連の変更要請もあります。
ここで発生する相違点を ※変更2 とします。
現場工事中
着々と工事が進み建物が出来てくると細かな部分の改善提案や変更要請がでます。
また工事中に何らかの問題が出て大きな追加工事や変更が入る事も(時々)あります。
ここで発生する相違点を ※変更3 とします。
竣工
この時点までの変更をすべて反映したものが本来の竣工図書と呼べるものです。
竣工してから実際の建物と相違が無いか確認し図面を修正した後に製本すればよいのですが、
マンションの場合は、何らかの事情でそうなっていない事が多いと言えます。
皆様のマンションの竣工図面をご確認ください
さて皆様のお手元の竣工図書はどのレベルでしょうか?
仕上げ材などが至る所で変更されているにも関わらず、
それが一切反映されていない場合がこのレベルに該当します。
まずは簡単に
◆マンションの正面(通常は道路側)から見える部分の仕上げ材に相違が無いか?
◆屋上の配置や装備に相違が無いか?
◆ピロティや通路部分が確認申請図面に記載されている用途以外に使われていないか?
から調査すると分かりやすいと思います。
相違点を探すときに注意すべきポイントは他にも色々あるのですが、上記の3つは特に専門知識が無くても判別できますので、設計事務所を雇う前に管理組合の皆様だけでも簡単に違いが見つけられると思います。
このレベルに該当してしまう図面では大規模修繕で見積もりが正しく取れずに工事中に発覚すると工事代金が急に増額されたりするトラブルになりますし、最悪の場合は違法建築物となっている事になります。
またきちんとした知識があるコンサルタントを雇っていない場合、工事中に判明して不足する場合は追加を請求される反面、払い過ぎた分はそのまま放置され返金されないこともある為、大規模修繕は何時もマンション管理士さんや管理会社さんにお任せ・・・みたいな管理組合さんの場合は特に早いうちに図面を現状と整合性のある状態に修正させたほうが良いですし、その調査の時は法令違反が無いかも再確認しておくと安心です。
最も大きな変更は ※変更1 の時に起きます。
※変更1 までの修正が完了していれば多くのケースでは大規模修繕の見積もり作成に大きな影響は出ないと思われますが、問題が少なからず放置されているのであれば日々のメンテナンスなどでは問題になる事もございますので早急に対応したほうが安心です。また時々 ※変更2※変更3 でも大きな変更が発生する事があり、その場合は大規模修繕の見積もり依頼前に直っている必要があります。
本来は「竣工図面」と呼ぶ限りこの状態が当たり前ですがマンション業界では多くのマンションでミスが放置されたまま図面が管理組合に提出されてしまいます。
設計図書の引き渡しが義務化
業者の中には完了検査後に違法な工事をする者も居る為、昔はそれが発覚してクレームが入る事を嫌って図面を渡さないという会社も存在しましたが、
2001年8月1日以降に分譲されたマンションは設計図書の引き渡しが義務化され拒否できなくなりました。
(設計図書の交付等)
第103条
宅地建物取引業者(宅地建物取引業法 (昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第三号 に規定する宅地建物取引業者をいい、同法第77条第2項 の規定により宅地建物取引業者とみなされる者(信託業務を兼営する金融機関で政令で定めるもの及び宅地建物取引業法第77条第1項 の政令で定める信託会社を含む。)を含む。以下同じ。)は、自ら売主として人の居住の用に供する独立部分がある建物(新たに建設された建物で人の居住の用に供したことがないものに限る。以下同じ。)を分譲した場合においては、国土交通省令で定める期間内に当該建物又はその附属施設の管理を行う管理組合の管理者等が選任されたときは、速やかに、当該管理者等に対し、当該建物又はその附属施設の設計に関する図書で国土交通省令で定めるものを交付しなければならない。
なぜ起きる?間違いだらけの竣工図面問題
さて、大小の差こそあれ殆どのマンションで見つかるであろう竣工図面と建物現状との相違ですが、これが起きるのは業界の特殊な仕組みにあります。
高需要期に出没する悪質業者など違法行為を何とも思わず行う者たち
1つは違法な変更を加えて条件をよくして売りやすくする業者の存在ですが、これはマンションブームや消費税の値上げ前とかの高需要期に他業種から参入てくる業者によく見られる特徴です。このような時期は建てれば売れるので、雨上がりの森のキノコのようにポンポンと出てきます。非常に短期間の間に競争するように建設ラッシュが起きる為に職人や材料の争奪戦になり有名マンションブランドでも手抜き工事が増えますが、金融業界などから入り込んでくる(資金は潤沢だけど経験やモラルは殆ど無い)業者は特に問題を起こしやすいです。 昔はライセンスを持つ会社を買い取ってからホームレスのような人を社長に仕立てて新しい社名で販売して、ある程度したら倒産させてまた新しい社名で販売を行う業者も居ましたが最近は知名度が低いと購入者に警戒されるので既存のマンション業者で資金難に苦しんでいるところに資金援助や提携という形で入り込み、社長以下役員名そのままで、その業者の名前やマンションブランド名だけを使用して商売するので私達でも外部から見ただけでは見分けることが出来ません。ですのでブームの時に購入する場合は物件ごとにその品質を慎重に確認する必要がありますが、そのヒントの1つがこの竣工図書と現物建物の整合性を確かめることで分かるのです。
特に気を付けていただきたいのが、一度確認がおりてしまえばその後の変更があっても再度確認申請を出さない悪質な処理をする会社の存在です。 最も悪質なケースでは完了検査を受けて承認されてからわざと違法な変更工事を行う業者もいます。この場合は違法建築を行っているのでわざわざ証拠を残すような図面の修正は行われません。
具体的な例としては駐輪場に屋根がついている場合、ピロティや通路部分にゴミ置き場や駐輪場が増設されている場合などが良くあるケースです。
注意 誤解無きよう書いておきますが合法的に屋根を付けたりピロティ部分を使用しているケースはいくらでもありますので屋根がついているから、ピロティだから違法という事ではありません。 あくまで面積オーバーで本来なら許可されない事を検査後に違法改造して実現させているケースが問題となります。 これらが合法的に行われたものか違法かは確認申請の時の図面と照合すればすぐにわかります。 確認申請の審査を通過した図面は合法のものしか記載されませんので、その図面に記載のないものがマンションの敷地内にあれば詳しく調べたほうが良いです。
また申請時に問われることが無い要素(法的に制約を受けない要素)に関しては変更していても違法ではありません。通常それらは図面に記載しませんが室内の家具や外構の植栽など雰囲気を出すために書き込んでいるものもあります。これらの配置は法的な制限を受けません。 ただし植栽は面積や植える樹木の数などが建築の許可条件になる事もありますのでその場合は申請内容と現状が相違ない事をご確認ください。 図面との整合性が取れない部分全てが違法という訳ではございませんが、マンションの建設許可の条件は多岐にわたりますのでこれらを全て守っていないと違法建築物となります。詳しくは個々の物件ごとに確認が必要なのでお近くの一級建築士事務所にご相談ください。
マンション専門設計事務所という特殊なビジネスモデル
もう1つはマンション専門の設計事務所というこの業界特有のビジネスモデルにより起きます。 私は今から20数年前、そのマンション専門設計事務所の1つでお仕事をしておりました。日本のマンション工場ともいうべき存在で、ものすごいスピードでマンションを次々に設計している設計事務所です。 特に阪神大震災の前までは切れ間なく次々とマンションの図面を作成する毎日を過ごしておりました。 マンションの設計は特にレートが低いので設計事務所も利益を出すためには次々と休みなく図面を作成しないとすぐに経費(主に人件費)で倒れてしまいます。 個人で受けてるなら年間1棟か2棟でも食べて行けそうですが、建築士が20人、デザイナーが20人、事務や営業が10人の中堅のマンション専門設計事務所では仕事が切れると危険というくらいギリギリでした。 私が勤めておりました事務所は自社名でマンションを設計するだけではなく有名なデベロッパーやゼネコンの物件も、ゴーストライターとして設計しておりました。 そんな感じで仕事が絶え間なく入ってくるので1つのマンションの図面が一通り完成し役所に確認申請を出して許可が下りると直ぐに次のマンションの基本設計を始めるというスピードでした。ですので竣工した時点ではすでに全く別のマンションの設計の最中という状態です。また設計担当者が現場を頻繁に訪れて細部まで厳しく工事監理する設計事務所でないと見落としが大量に出ますが、マンション専門設計事務所はそれをする経費や時間がありません。 例えば個人で設計事務所をしている場合は、自分さえ長時間働けば対応できるので経費の心配なく納得するまで動けますが、マンション専門設計事務所勤めだった当時は定期的な現場訪問など当たり前のことをする時間すら殆どない状態でした。
このような事情もあり設計はスピーディーに仕上げるけど工事監理はほとんど行わない為、本来専門家として行うべき工事監理が出来ていないので現場の方々から「無能集団」と呼ばれたり、同業者(一般の設計事務所)から見下されたりするので、マンション専門設計事務所で働いている事や過去に働いていた事を隠す方も多いのですが、私にとっては建築の道への門戸を開いて頂いた事や短期間で大量の知識や経験を得させて頂いた事など大変感謝しており、現在のような差別がなくなる事を望んでいます。 私はその後アメリカの設計事務所に居た時に東京のタワーマンションを含む複合施設の担当をして以来、マンションの設計はしておりませんが、上記のように過去に怒涛のマンション設計を経験しているのでマンション設計の現場が如何に過酷かもよく分かっており、そこで働く方々の苦労は、よく分かる上に昔の自分を見ているような気持になるので悪くは言えませんが、修繕コンサルタントの立場から見ると竣工図書の現状との不一致はお客様に経済的なダメージを与える大きな問題なので、忙しくても最後の仕上げとしてきっちりと時間を確保して相違点を無くしてから製本&納品していただければと思います。
何故なら設計した方であれば、相違点を探し出すのは難しい事ではないですし労力も非常に少なくて済みますが、後から雇われてやってきた私達が一から調べるとなると大規模修繕の調査を行うのと同じような労力が必要になります。 また相違点が限りなくゼロに維持されているだけで購入者さんは、その後何度も行う工事やメンテナンスでその恩恵を受ける事が出来ます。 図面は全ての基本になる重要なものですので業界関係者の方は前向きな改善検討をよろしくお願いいたします。
その一方でマンション専門設計事務所のような存在が無いと今のマンションの新築価格は維持できなくなるという業界の構造にも問題があります。 マンション専門設計事務所は、その時代の流行を取り入れたマンションを設計するため、1年も2年もかけて設計することが出来ず、通常数か月程度という短期間で設計するので作業量の多さからどうしても大所帯になる傾向があり、(それでも利益を得るために)そのシェアを高く維持しなくてはならず徹底的な効率化を進めて設計報酬を下げています。数字的には私達一般的な設計事務所の報酬額の5分の1から3分の1くらいの比率の報酬で設計しているので、一般的な設計事務所が行うような細部まで徹底した設計を行えないのだと思います。
しかし、このようなマンション業界の裏事情は一般の方々にはあまり知られていないので
普通の設計事務所とマンション専門の設計事務所が同じものと判断されている事があります。
例えば、大規模修繕のコンサルタントをしているとマンションにお住いの方々から
ここを設計したのは大きな設計事務所と聞いたんですけど
もっときちんと設計できないのかしら?
どうして風の流れを考えてないのですかねぇ?
こんなのって設計事務所として普通なのですか?
などそのマンションを設計した設計事務所を同業者としてどのように思うのか?
と意見を求められることが度々ございました。
私の意見としては値段が安いなか何とか安全な建物を提供するように努力されているマンション専門の設計事務所さんよりも悪いのはマンション業界の仕組みではないかと思います。 もちろんマンション専門の設計事務所にも改善すべき点は多くありますが、現在のレベルよりも高い完成度が求められると、その前に報酬を見直すことになり、その結果マンションの価格が今よりもさらに高くなるという事が起きてしまいます。 ファーストフードやファストファッションという業態がありますが、マンション専門設計事務所はまさにファスト設計という薄利多売の立ち位置でお仕事されていますので、三ツ星レストランやオートクチュールのようなレベルを追及されている業態ではなく、世の中から必要とされ独自の進化をして今も現存しているビジネスモデルですので報酬の低さを考えると仕方ない部分もあると思います。ただし、最近はマンション価格も高騰し、もはや低所得者層の為の夢のマイホームという存在ではなく、高級な邸宅というステータスを求めてマンションを選ぶ方も増えてきていますので、世間の要求と業界の仕組みの間に隔たりが出てきているので改善されるべき点は多く出てきているとも思います。
マンション購入時にお考えいただきたい事
上記のように竣工図書が間違いだらけとなる事が当たり前のような産業構造がありますが、
図面の不整合は常に区分所有者さんたちの財布を直撃する問題を誘発しますので最新かつ正確な情報に修正されていなければなりません。
ここまでにご紹介した問題が1つ1つ正されるためには、マンション購入者の皆様に問題の大きさを認識していただき、購入時にこれらの相違がある場合の対応を販売している会社の営業マンさんにしっかり要求して頂いたり、可能であれば図面と建物の現状に相違があれば無料で修正対応する事を文書で確約をもらうなどしていただく事が有効です。 少なくとも管理組合発足後直ぐに調査して、悪質なものは瑕疵担保責任の範囲で相違点を全て販売主さんに修正してもらう請求を出すなど、皆様が強い関心を示していただき行動していただく必要がございます。 お客様からのクレームや購入時の判断ポイントとしてこうした問題を認識し考慮して頂かないと、過去20年と同じように、改善されないままこの先も10年20年と時間だけが経過するだろうと思います。逆に売る為には必死で努力するのがマンション業界であり、マンションという住居をここまで高級なものへと進化させてきた功労者でもあります。つまり購入者の皆様が気にされることはどんどん改善されていきますので、立地条件やデザインや値段以外に品質に関する部分も注目頂ければと思います。
マンション専門の設計事務所はマンション業界を支える為に独自の進化を果たして業界に適応してきました。 過度に安く設計を受注する事や現場はゼネコン任せで工事監理をほとんど行わない事など、その行為の是非を問われたり、過度に低い評価や差別を行う方も居られますが、マンションの価格を誰もが買えるレベルに下げることに貢献してきた功労者でもありますので、その事をよくご理解いただければと思います。
また私も若い頃に設計のお仕事を始めるきっかけとなったのがマンション専門の設計事務所でしたので、設計の道への門戸を開いていただいた事に今も大変感謝しております。 多くの若者に設計の道に進む機会を与えてくれるという点でも設計業界に多大なる貢献している存在ですので、今後も時代の要求に合わせて変えなくてはいけない部分はしっかりと適応していかれる事を願っております。
設計事務所には マンション専門設計事務所は含みません。 あくまで一般的な一級建築士事務所を示します。
これは上記のように対応できる業務範囲が大きく違うためですが、特にマンション専門のところは特定の業務に特化しているので、手間暇のかかる大規模修繕コンサルタントなどを依頼しても断られることが多いです。
一般的な一級建築士事務所はきちんと対応してくれます。
建築士でマンション改修を多く手掛けている中で、目立つひずみを感じております。
竣工図書は、法律で定められてから、引き渡しの義務制限を受け、交付されるのですが、内容と言ったら法規制前よりも粗悪になった側面があります。法の定める範囲以外は交付しなくてよいという解釈が成り立つからです。
最近は、ほとんどがCAD化したため、手書きと違ってレイヤー処理が可能なため、施工時点で記載されていた内容がそっくり消去され、竣工図として交付されている。意図的な消去で記載されていなければトラブル回避できるという身勝手な売主の考え方からそのようになっている。
最悪な竣工図を見たことがありますが、一般平面図に間取りの記載はなく、寸法記載もない。タイプ別平面詳細図には、さすがに間取りは記載してあるものの、寸法は一般平面図程度で、建具の寸法や間取りの詳細寸法を一切消去してありました。そのほか、断面図なども同じ状態で、こうなると改修の積算作業自体が困難になり、情報の少なさが問題になっております。マンション管理適正化法の定め事態が不適切と思えますが、放置してはいけないものと考えられます。
少なくとも、改修で必要になる建具表の添付は必要と思われます。
鈴木哲夫さん コメントありがとうございます。
お返事が遅くなり申し訳ありませんでした。
おっしゃる通り売主が作り上げている市場なのでルールも売主の思うままにされている印象を受けますね。 これを正すにはまず区分所有者さんやこれからマンションを買おうという方に本当の現状や裏で何が起きているかを正しく伝えないといけませんが、なかなか十分な時間も確保できず現在に至ります。
私が気になるのは法整備の遅れと言うか国や自治体の関与の薄さが問題では無いかと言う点です。
アメリカのハワイ州の様にマンションが竣工してから販売までの間に、図面、管理規約、長期修繕計画書などを一度「おかみ」または指定検査機関が最低基準を満たしているか確認してからマンションを販売させれば良いと思うのですが現状は長期修繕計画書をはじめ子供だましな内容(フェイク)で販売されているケースが殆どの様に思っています。 近い将来、日本中のマンションの長期修繕計画書がフェイクだという事が話題になると思いますが、それを正そうとしたときに図面がでたらめで、そこからやり直さないといけないと判明してもその時には売主の瑕疵担保責任も切れていて結局区分所有者さんが自腹で図面から作り直す・・・そんな流れがあちこちで起きるんだろうと思います。
図面に関しては大規模修繕などの金額算定の肝になるので積算が出来ないようなものは、そもそも基準以下として販売主に作り直すようにさせないといけませんが、私達建築士が殆ど関与しない中で売買が行われているので(国も監督していない中)信じられない低レベルな完成度の図面が竣工図書と呼ばれ、結局、全てのしわ寄せは購入者の方々に集中するようになっているのも気になります。
ご指摘のようにCAD化でクリック一つで表示非表示を切り替えられるため故意に記載を消す例もあるでしょうし、故意だけでなく過失により重要なレイヤーがOFFのまま印刷されたと思われる例もありますね。 さらにこれらの一番の問題は「お客様の殆どが理解されていない事や興味を持たれていない事」です。これらがどれほど大きなコストや経済的なロスになるかなども私達建築士しか把握してないでしょうから1つ1つ細かく説明していくしか無いですね。
それにしても鈴木さんの経験された例はとても悪質で深刻ですね。
>一般平面図に間取りの記載はなく、寸法記載もない
>詳細寸法を一切消去
確認申請の時は合法的な室名や寸法で申請して建てる時は大きく変更して建てて検査をうまくやり過ごしたのでしょうか?
違法建築をする業者さんは常に新しい手口を考えてこられますので年々巧妙化してますよね。
まあ私達を欺くレベルでは作られてませんので私達が介入した時点で発覚しますが、一般の方には何が書かれていても分からないので多くの方は図面や契約書の中身よりも目の前の営業マンが口で話す内容を信じしてしまい後で気が付いた時には手遅れなんですよね。
ちなみに確認申請が通っているなら役所に行けば向こうの図面に寸法や室名が無いという事はあり得ませんので、そちらと照合すれば何故消されているのかも分かるでしょうから今後の対策を講じやすいですし、区分所有者さん達にもどのような被害に遭っておられるのか説明してあげられると思います。多分かなり深刻でしょうけど。
20年位前なら大きな土地に小さな建物を申請して実際には大きな建物を違法に建てるみたいな方法もありましたがそれだと検査がアウトになりますし、今は検査済書が無いと制約が多いので不正に取得する業者も居ますね。 手口は広まるといけないので書けませんが先日も大阪のビルの改修で発覚したのですが竣工時の書類の殆どがフェイクだった事例がありました。 これも被害にあうのはいつもオーナーさん、つまり素人の方ですので気の毒でした。 役所に公的に残っているものとお客様に渡されているものが別物と言うのは本当に怖いです。
私が関わった物件で建具表はあるけれど表だけで、平面図とのリンクが無くどの建具が何処に使われているのか不明なため、1つ1つ採寸して数え直したことがありました。 その大規模修繕では建具の補修は含まれてませんでしたが壁の塗装面積の積算や長期修繕計画書を見直すのに必要で全て一から作りました。 当然区分所有者さんは誰もこの問題が如何に深刻かはご存じないので「竣工図書に不備が多い」という事だけお伝えして出来る事は全てこちらで対応しましたが、正直、この先何度も修繕を行うのであれば作り直したほうが良いと思ったのでその事を修繕委員会で伝えたものの結局「次の修繕の時に考えます」というお答えを頂きそのままになりました。
マンション業界はあまりに問題が多いので何処から始めるのが良いのか悩みますが、出来る事からコツコツ積み上げながら模索していこうと思います。